コンビニエンス・ラブ | ナノ


あれからまたしばらくあの三人は私の所には来ず、私も彼らと会えない時間帯に働いていることが多かった。

今現在、夜の7時。私は自宅にいた。夏バテからか夕飯も食べる気が起きなかったし食べるより先にやることがある。明日の夕方5時までに提出するレポート課題の結論が書き終わっていなかった。そんな課題を忘れてたなんて話は、私としては珍しくて、憂鬱になって、何もかも投げ出したい状況にあった。
バイトは久しぶりに休んで、暑いけど頑張って机に向かって頑張っている。ガリガリ。ガリガリ。ああ、頭も目も疲れた。
さっきから同じ机の上で携帯が鳴っていたりもする。メールを知らせるバイブレーションと0.3oのシャーペンの芯は机とぶつかって不協和音を奏でていた。さっきからどっちもうるさいけど、携帯は例の彼氏からのメールだしシャーペンの音は私が悪いんだから仕方がない。
彼氏からのメールの原因は、勇気を出して「友達に戻りたいから。あともうメールも電話もして来ないで」とメールを送ったら案の定電話やらメールからが大量にかかってきたためだ。なんで今日送っちゃったなかなあ。わざわざ課題とかぶんなくったっていいはずなのに!私のばか!

全てに対する怒りのボルテージが上がって、どうしようもなくなったからなにかに怒りをぶつけたくて消しゴムを窓に向かって投げた。
エアコンをつけるのも勿体なかったので網戸にしてあったから、一応はねかえって来るはずだったのに。

「あ。」

網戸の耐久性も限界を迎えていたらしく、端からめくれるようにして消しゴムは外へ落下した。無駄な労力を使う予定をたてた事に更にイライラしたけれど、課題終わらせたらゆっくり寝ればいいじゃないと自分に言い聞かせて、重い腰を上げた。
それはピンポーンと軽快な音がしたのと同時だった。今の時間帯に客なんて珍しいから宅急便かなんかかな。
印鑑を片手にドアを開けると、驚いたような表情の謙也くんがいた。

「こんばんは」
「こ、こんばんは…どうしたの?」
「今日バイトの人がなまえさん休みや言うてて」
「え…?それで来たの?」
「いや、なまえさん最近思い詰めてるみたいやからってバイトの人言うてはりましたんで…メアドも知らんし…俺で良ければ話聞こか思ってて…」
「ありがとう。とりあえず、上がりなよ」

男の子を家に上げるのに抵抗はなかったから私は構わなかったけれど謙也くんは更に驚いたような顔をした。それから照れたように「お邪魔します…」と聞き取れるかそうでないかくらいの声量で言った。



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