コンビニエンス・ラブ | ナノ

「そんな奴より俺のがええやろ?」
「え?」
「なまえ、俺だけの…俺だけのもんになって?」





「ひゃああああ!」
「うわ!!!!!」

休憩中にうたた寝してしてしまったらしく、先程のが夢だと判断するまでにしばらくかかった。ここはあの休憩の時に使うテーブルだし、まだ先輩はバイト中みたいだ。他のバイトの人も起こしてくれればいいのに。
そして眠い目を擦って良く見ると、なぜか目の前には夢の中で私を口説いた謙也くん…が。

「けっけけ、謙也!?」
「へ?」
「…ごめっ謙也くん…!わた、私ねぼけてるみたいで!かお洗ってくる!」

メイクしてたから洗いやしないけど、とりあえず氷のうみたいなアイスノンみたいなのがあったからタオル巻いてそれで顔冷やそう。きっと今顔が真っ赤だ。
呼び捨てにしちゃったし、なんか顔近かったし。まさかの寝顔見られたパターンとかあったりするのかな?どうしよう、緩んだ顔は不細工だから嫌いなのに。
……なんでこんなに謙也くんのこと気にしてるんだろ……。いや、これは知り合って間もない友人に恥をさらしたくないから…だよね…?

「なまえさん?熱でもあるんと違います?」
「っふぇ!…け、謙也くん!」

私を追って奥まで入ってきた謙也くんにびっくりして、氷を思わず手から離してしまう。つるりと私の手を離れたそれはタオルごと豪快な音をたてながら床と挨拶した。
それを素早く拾い上げてパンパンと払い、振り返って謙也くんを見ると、不満なような心配そうな顔をしていた。

「ね、寝てて体温あがっただけだから!平気だよ!」
「夏風邪は気をつけなアカンのですから…」

いつもより謙也くんが五割増しくらいイケメンに見える。おでこに手を当てて自分のおでこにも手を当てているけれど熱はないみたいやな、と言った。そうだよ、熱じゃないから、はやく手を退けてくれないかな。
もちろんのこと謙也くんと目を合わせられない。ふらふらとさまよった視線は時計に行きつき、短針の位置を理解すると自分の目を疑った。

「夜の…9時…。謙也くんは…門限とか大丈夫なの?」
「テニスの練習って言えばどうにでもなりますもん。それより、平気ですか?」
「あ…うん。……帰らなくちゃ…だね」

なんか…男の子を前にドキドキなんて、らしくない、なあ。
- ナノ -