コンビニエンス・ラブ | ナノ

あの挙動不審な子はこのコンビニによく来るらしい。一人でも来るし、友達とも来る。その友達は専らテニス部の人達で、三人だったり黒い髪の子がいなかったりする。三人は顔が良いから自然と目がいくのもあってよく見かけるようになった。ほら、今日も三人で来てる。
いかんいかん。陳列を早く終わらせなくちゃいけないのに。

「…あの、…これ。」
「え?」
「お、落ちとったんやけど」
「…あ、本当だ。ありがとうございます」
陳列中にお尻のポケットに入れていたキーケースが落ちていたのを気がつかずにいたら、あの挙動不審な子が拾ってくれた。
するとペットボトルの並んでいる方から左手に包帯巻いた子が出て来て、店内の時計を指す。

「謙也ー?はよ決めんと間に合わんでー」
「だって。ありがとね、謙也くん」
「いいいや、た、大した事やないから」

対人恐怖症というわけでもなさそうなのになあ。なんでどもるんだろう。

「なまえちゃん、俺、休憩入るー」
「はーい」

おにぎりを選び始めたのを見届けるとバイトの先輩が私に言った。しまった。さっさと並べ終えないといけないのに。

急いでパンをまとめて陳列してから、レジにまわれば再び謙也くんが居て。見てて飽きない弟みたいな感覚が、私に謙也くんへの興味を抱かせた。

「12円のお返しです。頑張ってね、部活」
「お、おん。なまえさんも」
「ふふ、ありがと」

今日は夕方あがりだから外食しちゃおうかなと考えながら、店から出ていく謙也くんの後ろ姿を見ていると、やっぱり黒髪の子がこっちを見ていて、目が合ったついでに手を振ると謙也くんに合図して一緒に手を振り返しくれた。

なんかこれって、すごく友達みたい。


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