コンビニエンス・ラブ | ナノ

大学に入ってから、初めてバイトをした。私の家は割と貧乏な部類で、共働きまでしてくれて家計を支えてくれる賢い母が一番働いていた。それを支えるために私が家事をし、高校の三年になってからは父を家事に巻き込み勉学に励んだ。バイトが初めてっていう理由は父が許してくれなかったのが原因でもある。
結局第一志望ではあるものの文学部で、あまり就職に期待できなさそうな所だった。別に文学部が就職に期待できないってわけじゃなく、この学校の文学部の就職率は年々下がる一方なのである。けれど私は大学に入れた事自体が奇跡だったから、未来の心配は無論していなかった。
実家は東京なのに大阪にある安い大学に進学したから、アパートを借りて過ごさなきゃいけないし仕送りに頼っていたら家計がもたない。それでバイトを始めた。

ちなみにバイトとはコンビニのバイトで、おばちゃんが来たりしてたまに30分程度喋っていくこともある、近所では馴染みの深いコンビニで働かせてもらっている。近くに中学もあるから、休み時間や放課後に寄ってくる学生も多い。

「ありがとうございましたー。部活頑張ってねー」
「おん、ねーちゃんもなー」

今は丁度大学の都合で学生は一週間休み。今が稼ぎ時かなあと、おはようからおやすみまでライオンくんが暮らしを見つめる時間帯まで働くつもりでいた。

「462円になりまーす」

また、近くの中学の子たちだ。テニスバッグを肩に提げ、スポーツドリンクを2本とちょっとしたお菓子を並べたのを見て言った。三人はなかなか顔立ちが良く、中学生にしては私より身長が大きいところからして上級生であることが見て取れる。

「50円のお返しです」
「お、おーきに」
「? 毎度ですー。」

金気味な茶色髪の子がお金を出して釣りを返すと緊張しているのかどもりながら礼を言う。
あまり買い物をしないのだろうか。変わった子がいるんだなぁ…。
そう思っていたら左に包帯を巻いた子が何やら笑いながらその子を連れて店を出ていく。そしてレジの前でぼーっとその様子を見ていた黒髪のピアスの子が、あからさまなため息をついてアポロチョコを買っていった。
最後に「ほな、また」と意味深な言葉を、またまた意味深な笑みで言われてちょっと話が読めなかった。つまりは…なに?


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