迷い子(ヴィンセント/蝋人形)


目的を成し遂げる為に情を捨て他人を殺し、そして蝋人形にする


毎日蝋を生成し“人形”を綺麗にしていく、最初は怖くてたまらなかった作業も淡々とこなせるようになり自分はまるでロボットのように生きていた

そんなある日死んだ街に小さな女の子が迷い込んだ
いつもなら材料が来たと喜ぶべきなのだけれど妙に様子がおかしい、女の子の?いやレスターの様子が


レスターはいつもニヤニヤと笑っているのに今は嬉しそうに女の子と手を繋ぎ微笑んでいるだけだ、繋がれてる女の子もにこにこと笑っているだけ
もしかしたら隠し子かという選択が頭に過ったけれど…あのレスターが?僕達の兄弟だ。恋人を作れるものか、ありえない

「(誰…)」

小さな声でぼそりと呟いた
僕達以外無人といえど少し距離がある、あっちに聞こえるはずがない
そう思い僕は目を閉じた



「私はフレイアン、貴方は誰?」

聞こえるはずがなかったのに

改めて見ると女の子というより少女が適当かもしれない、少女はにこりと笑い僕の顔を見上げている
その手にはレスターの手が握られておらずレスターはどこだと顔をあげると少女の後ろからゆっくり歩いてくる姿が見えた

「(レスター、この子誰?何で殺らないの?)」
先程から思っていた疑問を率直に投げかけるとレスターは少し困ったようにぽつりぽつりと話始めた

「あー、こいつな…目が見えないんだってよ」

「(…?)」

だからどうした?見えないなら好都合、早く済ませればいいのに

「ちがうよ?少しは見えるもん」

「あ、ああ。ごめんな?
で、親がいない…というか虐待されてたんだとさ、それで最後はこの森に捨てられたらしい」

虐待…もしかしたら小さい頃のあれも虐待だったのかもしれない、今となっては関係のないことだが

確かに話を聞く限りとても可哀想だと思う、情を捨てたんじゃないかって?それは仕事の時だけ。でもここまで執着する意味が理解できない

「そうだ!聞いてくれよヴィンセント!俺お兄ちゃんって呼ばれたんだぜ?妹ができたみたいだ!」

「最初おじさんっていうとお兄ちゃんって呼ばせたくせにー…」

「まあまあ、気にするなよ?」

…これか、散々勿体ぶっておいてこれ?

殺意も失せ仮面越しに呆れた表情をしていると少女がエプロンの裾を引っ張っていた
「(何?)」

「貴方ヴィンセントっていうの?あのね、住むところないから一緒に住んでもいい?」

「住まわせてやれよ!」

「(レスターうるさい
…えーと、フレイアン?ここに住んでも怖いもの見るだけだよ、それでもいいの?)」

「うん!フレイアンがね、一番怖いのは誰もいないことなの。だから大丈夫!」

「(そっか…)」

答えを聞き、背を向けて家への帰路を歩む

二人を置いていかないように、ゆっくりと




後ろからはレスターと新しい家族の笑い声が響き、死んだ街が少しだけ明るくなったような気がした











「こいつ誰?お前らそんな趣味があったのか?」
「違う!」
「(違う、新しい家族になる子。フレイアン、ボーだよ)」
「ボー?ボーお兄ちゃん?」
「…よろしくなフレイアン」
「(ボーもか)」


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