short | ナノ
「あーべー、」

「…」

「阿部ー」

「…」

「あっかんべー」

「うぜぇ!」



何よ、何よう。そんなに怒んなくてもいいじゃん。さっきの休み時間に食べていたじゃがりこの残りの一本を口に入れた。あ、美味しい。でも暇だから呼んで見ただけでしょ!とか思う気持ちは消えない。え、それっておかしいこと?ううん、No!暇だと退屈だし死んでしまうよ、眠たくなるよ。ぽりぽりとリスのようにかじってじゃがりこは胃の中へ消えてしまった。あー、ほんとに暇になってしまった。他の子と喋ろうと思うも他の子は違うことしゃべっている。しかも私に背を向けて。そしたらなんかもう、阿部しか残ってないし。



「あー、眠たい」

「じゃあ寝ろよ」

「阿部も暇なんでしょ?」

「いいから日本語通じてくれ」

「ナイッツッコミー」

「…」

「むなしいじゃん」

「知らねーよ」



「男なんだからもうちょっと女の子に優しくしなさいよ。女の子は夢見るものなのよ?優しい男の子に弱いのよ?私は声低くて普段とはどこか違うギャップ?を自分だけというかまぁ、それはいいとして見せてくれる男子が胸きゅんになるわけだけど。てなわけでねー、」



と長々と語っていたら阿部が珍しくぱちくりと大きく瞬きをしてこちらを見ている。え、もしかして。



「引いてる?」

「大分前からな」

「えー、私寂しい」

「は?」

「はあ、」

「んだよ!」



別にいーもん、そんなの気にしないわ。私マイペース、自分の心を保つの。罵られたとしても耳を塞げ、すっぽりとぬけていけー!てな感じでいこう、そうしよう。じゃがりこの箱を平らに潰し潰し、潰した。あー、自分確実に気にしてるわ。



「なにやってんだよ」

「頑張り中」

「じゃがりこの箱を潰すことにか?」

「か、関係ない、あほう!」

「お前があほだろ」



ふと顔を見るといつものしかめっ面ではなくてくしゃり、と珍しく笑った顔だった。ほらかせ、と言って潰しに潰しまくった箱を私の手から奪い取って少しはなれたゴミ箱へホールイン。やっぱ野球部だわ、こいつ。すごいじゃん。新しい、発見。それは、少し、どきどきした、瞬間だった。




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