short | ナノ
私、今まで生きてきた人生の中でもとびきり大きなことをしでかしてやりたいと思います!そう、告白です!
片想い歴は確かにそんなに長くないのかもしれない。たかが3ヶ月だ。されど3ヶ月。私はその間に挨拶をし、喋りかけ、メアドをゲットし、ついでと言いながらも携番もゲットし、メールをして、電話も…私、頑張ったでしょ!というわけで距離を出来る限りに近づけたつもり。最初の挨拶だなんて「っす」だったけど今じゃ「おはよ」になったのも進歩進歩。まあどれもきゅん、となって好きなんだけど。やっぱり好きなんだけど。こう思えちゃうのはやっぱりあたしが恋してるから、なんだろうなあ。自分すごく恋してるなあ。
「ごめん、遅くなった。用って何?」
「い、泉」
学校の人が少ない中庭に朝呼び出すだなんてもう告白しかないよ。きっと、泉も薄々は気づいているんだろうな。でもそうだとしても私はやらなくちゃいけない。だって、そう決めたのだから。恋する乙女は強いのよ!
「朝練とかあっただろうに、ごめんね」
「いや、別にいい。まだ時間はあるんだし、」
「うん、ごめん。ほんっとごめん」
「謝りすぎだろ」
「うっ、」
「ショック受けすぎ」
ぐさぐさと棘のある言葉が来ているような気もするけれどそれも泉らしいなあ、と私は再確認する。そして今、私はこの気持ちを伝えようと思った。
「あのね、話なんだけどね、私、ひどいことを言うSなとことか、」
「はあ?」
「いーの、聞いて」
「…おう、」
「野球に真剣なところ、あと笑ったときの表情。他にも泉のことぜんぶ、ぜーんぶ好き」
「だからね、これから、私の知らない泉の事、もっと知りたいんだ。あの、付き合ってほしい、です!」
自分の思っていることを全部言ったと思う。私が泉のことを本当に好きなんだ、って分かってもらえるとすごく、嬉しい。それだけだったとしてもすごく、嬉しい。泉の顔を見ているとすごく悩んでいるように見える。あー、私の恋はやっぱり、一方通行だったのかな。そんなこと、わかっていた、はずなのに。やっぱり胸がずきんずきんと痛む。さっきまで確かにどくどくと動いていた心臓のはずなのに。何故だか、痛いよ。
「あの、さ。お前嘘とかついてねぇよな」
「つ、つくわけないでしょ!人がどんだけ頑張ったと思ったのよ、!」
「そうだよな、うん、まじでか」
「失礼な!」
「…俺も、好きだよ」
目が大きく瞬きをする。ぱちぱち、あれ、涙が出てきた。どうしてだろう、今の言葉、すごく嬉しいはずなのに。…そうか、きっとこれは嬉し涙。夢が、現実になって目の前はテレながらも私の大好きな笑った表情な泉がいたから。
「う、そ」
「嘘じゃねぇよ、あー恥ずかし!」
「へ、返品不可だからね、今更いらんって言っても無理、だかんね!」
「しないしない。ほら、泣きそうなのやめろ。教室まで行くぞ」
「うん!」
手を出されて、私はその手を握った。恋人同士、まさか本当に泉となれるとは。まだ夢の中にいるようだよ。ふわふわ、体が浮いているみたいで。あ、そうだ。またあとでまだ言っていない「おはよう」と言ってみよう。そしたらきっと泉は「おはよ」と言ってくれるんだろうね。でも確かに違うのはそれは一方通行な恋の気持ちではなく、両方通行の愛がそこにあるということ。泉、愛してるわ!