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*先祖返りの女の子


私のことを優しく見つめてる双熾さんはとてもずるい。オッドアイに吸い込まれて、もうそこから私は離れられなくなる。きっとあなたはすぐにでも今ここにいない凛々蝶ちゃんのとこに駆けつけたいはずだから、私がこうやって引き止めてるのは邪魔にしか思っていないはず。私のほうが、双熾さんのこと好きなのに。なんでだろう、あなたは私の隣にいない。なんでだろう、あなたが凛々蝶ちゃんのSSなのは。もし私があなたの主人だったら、きっとあなたは私のこと好きだったかもしれないのに。

「もしさ、私が双熾さんの主人だったら双熾さんは凛々蝶ちゃんのこと好きになってた?」
「…はい、凛々蝶さまは主人としてではなくても僕を救ってくれた存在ですから。主人という域を超えて凛々蝶さまを僕は敬愛、いえ。それ以上に愛しています。」

やっぱり、そうだよね。それを言われたら私はここを退くしかない。諦めるとか、そういうことはタイミングが大事だって言うもんね。

「やっぱ、あなたたちには負けるよ。ほんと、気持ち悪いくらいにお互いのことしか見てないんだから。」
「凛々蝶さまはどこにいらっしゃるのかご存知ですか。」
「…さあ?それを探すのがSSでしょ?私からは教えてあげない。」

あなたの顔がすごく清清しい笑顔だったから、私は凛々蝶ちゃんの居場所を知っていたけれど教えてあげないことにした。なんだか私ばっかりいいことが起きないから、単なる八つ当たり。私、失恋したんだから。恋敵の凛々蝶ちゃんにちょっといじわるするくらい、いいでしょ?私がどこかに連れて行ったわけではないけれど。それに、もうここを離れよう。あなたはすぐに凛々蝶ちゃんのことを見つける。そして私はそれを見たくない。だって、わかるでしょう?好きな人の一番幸せそうな表情を他の女の子に向けてる姿なんて誰だって見たくないもんね。

「あの、ありがとうございました。」
「…え?」

何を言われているかわからなかった。何がありがとうなんだろう。別に感謝をされることなんて言っていないはず。むしろ八つ当たりでいじわるをしたくらいなのに。

「僕はあなたが主人だったとしても嫌だとは思わなかったと思います。だから、僕のような者にそのようなお言葉を頂けたのが嬉しかったのです。だから、ありがとうございました。」

あなたはやっぱり、ずるい人だ。私の心を離させない。あなたの心はもう違う人のものなのに。私はあなたにごめんなさい、って言われてような物なのに。だけど、誰だって好きな人にあんなこと言われたら諦めきれなくなってしまうに決まってる。かくいう私も諦めきれなくなってしまった。凛々蝶ちゃんには勝てないかもしれないけれど、私が諦められるまでは好きでいよう。恋はそんなに簡単に終わるものではない、そうでしょ?


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