short | ナノ

先程から履いているブーツで足が悲鳴をあげているというのに私は走る。体が崩れ落ちそうになるのに走り続けなければいけないのだ。後ろから奴は来る。縺れる足に鞭を打って、走って走って、走る。どこまでなんて決めていない。ただ、あいつから逃げるためだけ。


「見ぃつけた。」


私は、光を失った。






「ていう夢を見たのよ」

「ふうん、それは朝から大変だったね。そういう危機を感じる夢だったらもしかしたら正夢になっちゃうかもしれないな。そしたら君はその彼から逃げるために池袋を走って逃げつづけなければいけない。それは見物だろうねえ」


何言ってんの、そう言おうとしてやめた。どうせ臨也は私が苦しむことが目的なのだ。今こうして発言の1つ1つを考えている、それは人間のムキになる感じではないから不満だろうけど。


「もし、君が誰かから狙われるような人間になったとしたら…」

「なったとしたら?臨也は私のことを助けてくれたりするの?」

「そうだね、じゃあ君を助けて、結を追いかけた人間、組織を追い詰めてあげよう。」



一瞬耳を疑った。臨也が私のために動くということは想像できないことだったから。私はうまく駒にされているのだろうか。刺のある言葉の中に甘い言葉というスパイスのようなものが入っていて、それが欲しくなってしまう。それは私も、臨也の信者と呼ばれる彼女たちも一緒だろう。そして足元が崩れ落ちてなにもない、真っ黒な底へと突き落とされる。私はもしかしたら夢で追いかけてきたあのの彼は臨也なのかもしれない、そんなことを思った。私が生きている日常という名の光がある場所から黒い底へと連れ出したいのか。いや、臨也はただ素直に、欲求を求めるためだけに私は試しているのかもしれない。


「俺は君という人間を愛してるよ。それはもう、壊してしまいたいくらいに。」

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -