4.勝手にすれば?(越前) シュッ。シュッ。 いつものマネージャーの仕事が終わって、 部室の前に立った私の耳に、ふと、何かを振るような音が聞こえた。 『??? なんだ?今は、みんな練習中だと思うんだけど…』 音のする方へと、少しずつ近づく。 シュッ。シュッ。 ちょっとずつだけど、大きくなっていく音。 シュッ。シュッ。 私が近づいて行く間も、鳴りやまない。 シュッ。シュッ。 『あ。』 音の音源を見てしまった私は、小さく声を上げた。 シュッ。シュッ。 音の正体は、“越前くんの素振り”の音だった。 『偉い・・・。いっつも眠ってばっかだと思ってたのに・・・。』 確かに私が見てる限りだと、いつも寝てた。 みんなが練習してる時も。 ミーティングのときも。 何やってても。 いや、言い過ぎかな?? ま、いっか。 兎に角。 あんなに一生懸命な越前くんは、初めて見た。 「何してんすか、ユリ先輩。」 『え。見つかってたの?!』 「分かってましたよ。」 『マジか…。』 ちょっとだけ、ビックリした。 私が居ることに気づいていた越前くんにも。 そして、初めて面と向かって先輩って言ってくれた事にも。 『偉いね。ちゃんと素振りとかしてたんだ…。』 「まるで、俺がずっとサボってたみたいな言い方っすね。」 『実際そうだったでしょ??』 「まぁ。」 私と会話をしながらも、なお素振りを続ける越前くん。 シュッ。シュッ。シュッ。シュッ。 リズムの良いその音は、聞いてるととても安心する。 『ふぁぁぁぁ。』 眠い。安心し過ぎかな?? 『ちょっとだけ、此処で寝てても良い??』 出来るだけ、邪魔にならないところで、 なお且つ、リズムの良い素振りの音も聞こえる場所で越前くんに問いかける。 「勝手にすれば?」 他の人が聞いたら、とっても素っ気ない言葉。 でも、その時の私には、安心できる言葉だった。 『ありがと』 その言葉を最後に、私は深くとても安心できる眠りについた。 『う、ん?』 数十分経った頃、ふと目覚めた私には、 青を基調とした“青学レギュラージャージ”が掛けられていた。 誰のものかなんて、直ぐに分かる。 ありがと、越前くん。 2012/01/04 - - - - - - - - - - 感想は、お気軽に Mailからどうぞv(o´∀`o)v |