涙の理由なんて知らなくていい(千歳)

君の瞳からこぼれおちる涙を、どうやったら止めれるのだろう。

俺にはそんな力は無いから。
あいつに任せるしか無いから。

こんなにも己の無力さを感じさせられたのは、
初めてだった。







「ユリ、どぎゃんしたと?また白石ね。」




『うっ。うっ。』





声を殺しながら、でも嗚咽だけはこぼれ出していた。

最近のユリはよく放課後の教室で泣いている。

いつも1人で。

全てを背負ったその背中は、あいつと付き合うまでとは
全然違う姿をしていた。






『あたしね。もうどうしたらいいか分かんない。』




泣きながら、少しずつ事情を話すユリは、
ガラス細工の様だった。



「白石の浮気ね?」




『もう。嫌だな・・・。』





そう言って儚げに笑う。

何故、別れないのか。なんて聞くまでもない。





「それでもユリは、白石が好きとやろ??」


自分の中から絞り出した言葉。

ユリに問いただすように。自分に言い聞かせるように。






『ぅん。好き。なん、だ。』



途切れ途切れに話す君は、もう、見ていることが出来ないくらいだった。

そして、





『ゴメンね。』





そう呟く。









ユリは知っている。俺がユリが好きだということを。


昔、1度だけ。 1回だけ、冗談っぽく言ってみたことがある。





「白石はやめて、俺にしなっせ。」




ユリには、聞こえないように、微かに呟いたつもりだったのだ。

でも、彼女には聞こえていた。





『ゴメンね。あたし、白石が好きだから。』





迷うことなく君は答えた。

“好き”だと。









あの日も、こうやって泣いている日だった気がする。
とても大切で。 こんなにも愛おしいと思える人に
何もできない自分が情けなかった。






こんな思いになるのなら、
涙の理由なんて知らなくていい

そんな風に思ってしまった。




2012/02/17    完成

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