「今年のバレンタイン、どうだったの?」

いつかと同じメンバー。



「それはこっちのセリフやけど?」

エリザベータの質問に唇を面白そうに歪ませるベルギー。


「私は!別に…」

誤魔化そうとエリザベータは目をそらす。


部屋には花と、お菓子と、紅茶の香りが溢れている。

およそ女の子らしいものが沢山。


「おいしいヨー!リヒテンちゃんお菓子ホント上手ネ!」

そんな二人とは違い、湾は手作りのクグロフに夢中。

「それはナターリヤさんと一緒に作ったのです」

朗らかにリヒテンは微笑う。

「ね?ナターリヤさん」

「あぁ」

ナターリヤの頬は微かに薔薇色だった。


「おいしいヨー、二人とも料理ホント上手!スゴイヨ!」

以前より仲の良い二人を見て、湾は温かな気持ちになる。

(とても幸せそうネ)


皆が幸せなことはよいことだ。
そう湾は呟いた。







「で?どうなん?」

そんな3人から少し離れた位置。

「〜〜っ渡した…けど…」

「けど?」

渡しただけでも彼女にとって大進歩なのに。

まだあるのか。


「投げつけ…ちゃった…」

「なんそれ!?」


ぶははははと爆笑するベルギー。

「ちょ、笑わなくても良いじゃない!!」

エリザベータは憤慨し、落ち込んだ。

「あぁ、ごめんなエリザ。
…でも渡せただけで進歩やん?」

「うん…」

「ギルもぶつけられた事いつまでも気にするような奴やないし…
それはエリザが一番知っとんやろ?」


二人が早くお互いの気持ちに気づけばいいのに、と内心ベルギーは思っているけれど。

(やっぱり二人のことやからなぁ…)


外野がとやかく言うべきではないからその言葉を飲み込む。


「みんなそれぞれ進歩あったみたいやしな」


湾とリヒテン、それからナターリヤの三人を眺めてにより、と口角を上げるベルギーにエリザベータが口を開いた。

「進歩って…ベルベルも?」

「あはは、ウチはちゃうよぉ。お兄ちゃんとウチは何も変わってへんよ」

朗らかに笑うベルギー。

「変わったらさみしいもん」



「おい」

ナターリヤが二人にいきなり乱入してきた。

珍しいことだ。

「どうしたの?ナターリヤちゃん」

エリザベータも内心意外に思っていたのだがおくびにも出さず返事をし、聞く体勢にかえる。


「兄さんの家にソイツが来て」

ナターリヤは緊張していた。

「ギルベルトのこと?」

「あぁ」


若干のタイムラグ。
それは葛藤していたから。



言うべきか言わざるべきか。



私の口から言っても良いのだろうか、とか。
言っても興味ないかもしれない、とか。
話し込んでいる二人の間に入り込んでも良いのだろうか、とか。


結局少しイマイチなタイミングになってしまって、ナターリヤは後悔と自責の念におそわれていた。


「アイツには似合わない可愛らしいラッピングの箱を持って自慢していた」

公務中の兄さんに。

思い出すだけで忌々しい。

でも私の忌々しさが誰かの救いになるというなら嬉しい。

そう思い、ナターリヤは続ける。

「目障りなくらい嬉しそうに、何時間も」

結局アイツは、アイツの弟の電話で帰っていった。

まったく迷惑だ。


「それだけだ」


次の瞬間抱き締められた。

花の香り。


「ぐふ…」

柔らかい感触のもので息ができない。

「ありがとう…!」

「ちょっとエリザ、ナターリヤちゃん息できてない」

「ごめん!!」

解放してもらってすぐ肺に酸素を入れる。


「教えてくれてありがとう…
本当に嬉しい」


今にも泣き出しそうな微笑。


(綺麗な人)

こんなに綺麗な人にも悩みはあるのだと少し驚く。

(馬鹿な男)

そんな女性を泣かせるなんて。


「…どういたしまして」

それはほんの気紛れ。

“笑ったら喜んでくれるよ”

まさか。そんなことはないだろうけど。


心の底からお礼をいってくれた彼女に、何か返事をしたかったから。








「ナターリヤちゃんは笑っとん方が可愛いな」

「そうね」


また元の輪に戻ったナターリヤを見て二人は朗らかに呟いた。

「皆何かしら変化はあったみたいね」


「エリザもね」



「…うん」






「うわぁ…!」

湾が窓の外を見て歓声をあげた。

声につられ二人もそちらに目を向ける。

「「うわぁ…」」


オレンジの色。紅茶の色。
蜂蜜の色。

「綺麗です…」

そんなとても素敵な色で空は染め上げられていた。



「そろそろお開きにしましょうか」

エリザベータが言う。

「せやな」



部屋には花と、お菓子と、紅茶の香りが溢れている。

およそ女の子らしいものが沢山。



そして、そんな時間が終わるのも。

同じように素敵な刻がいい。



「後片付け手伝うヨ!」


だから今が一番相応しい。

















後記 何とか完成しました…!
バレンタインは過ぎたけど…
完成してよかった…
“可愛い女の子達の可愛い小説!”
っていうめあてをたてて書いてきましたが、大丈夫ですかね…
可愛いだけじゃなくてドロドロした嫌なところとかも盛り込み…過ぎたかしら…(^_^;)

湾ちゃん、ベルベル、リヒテンは人名が発表されてなくて(管理人のググり方が足りてなかったらすみません!)国名と人名が入り乱れているカオス仕様。

ベルベルの方言もいまいちわからなくて、萎えてしまった方申し訳ありません。


色々不安が残りますが、ここまで読んでくれてありがとうございました!(つд;*)






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