「お兄ちゃん、きれいやなぁ」
「ほうやな」
夕焼け。じきに夜が来るだろう。
1日の終わりを告げるために。
「コレはお前のが一番やざ」
兄妹の手には手製の菓子が。
一日の終わりに手製の菓子を
***
今日のメンバーの中で一番女の子らしさが無いのは自分だと思う。
だって好きな人居ないし。
恋愛感情を抱かないのはすごく楽だ。
「やけどこのままやと何かあかん気がする!!」
叫んでも部屋に少し響くだけ。
「寂しい!むっちゃ寂しい!」
明日はお兄ちゃん所に行こう。
お菓子作って。
いつもタルト・オ・マトンだと呆れられるかな。
何か別のものを買っていこう。
***
「今日はチョコレートか」
「うん。たまには別のもええかなぁって」
少し早いけれど。
「日本式バレンタインか?」
そう言った後不思議そうにこっちを見てくる。
「お茶淹れる…ってどしたん?」
「いつものはどこやざ」
「へ?」
「タルト・オ・マトンは無いんか?」
「いつも一緒やとアレかなーて思うて」
「ほうか…」
心なしか前髪がしゅんとしてる。
もしかして。
「楽しみにしてくれてたん?」
そうだったら嬉しいなぁ。
「なぁお兄ちゃん」
「…ほうやったらなんやざ」
顔が赤いよお兄ちゃん。
ああ本当にすきだな。
「なんやざ」
「んふふふー」
背中から抱き締める。
お兄ちゃんは背が高いから私の顔は大体胸くらいの位置。
「お兄ちゃん、結婚したってーな」
「どこの妹や」
本当に。でも私にとってお兄ちゃんは世界で一番のお兄ちゃんだ。
「また来るやろ?」
「うん今度は」
タルト・オ・マトンを持って。
一日の終わりに手製の菓子を
とろける甘さをパイ生地で包むなんて!
まるで女の子みたいなお菓子じゃあないですか!