とある哀しい羊たちのはなし




「育ちの悪さを必死に隠してるみたいだけど無駄じゃない?」

「…あぁ?」


一気にアーサーの機嫌が悪くなる。



ああその顔。


お前にはそれがお似合いだよ。






「意識しすぎなんだよ。逆に滑稽だ」



彫像の局部を削り取るなんて。


「お前のやっていることは無駄だよ。美しくないから。」






「そうかもな」


殴られるだろうと身構えたけれど、アーサーはただ肯定した。



思わず拍子抜けしてしまう。





「なぁ」

聞いた。



億劫そうに目線だけこちらに向けると「何だ」って言われた。



豪奢な室内。
俺の座っている椅子もアイツの座っている椅子も無駄に豪華だ。





「どうしてそんなにつまらなそうなんだよ?」


訊きたかったこととは別の質問をしてしまった。



だって今のコイツは日の沈まない国なんて言われているのに。






「何でも出来てるからな、俺」


そう言って彼が笑う。
彼特有の皮肉を浮かべて。




可愛くない表情。





「料理は練習中みたいだけど?」

「うるせぇ」



そうだ。
お兄さんは出されたスコーンを食べなくてすむ様に話を始めたんだっけ。



「それで?続きは?」


真っ黒い塊。

それを視界の端にうつしたまま更に促す。



「時々怖くなるんだよ」


「どうして?」


答えなんて大方想像がつく。

成功が続くと不安になる、とか自分が間違っていないかとかそんなところ。
全く羨ましいことだね。





「後は落ちていくだけだろ?」


「まぁ、そうだろうね」




だって仕方ないじゃない。

俺だってそうだったもの。


満月なんてあっという間。

すぐに欠けて消えてしまう。







あの子は目の前に居るこいつに直接ではないにしろ殺されてしまったし。





「俺達には、すがるなにかがないものね」


「……そうだな」



「人はすぐ死んじゃうし、対等な相手でも本当の意味で愛し合えないし」




国同士が結ばれたら最期、自分か相手が消えてしまう可能性を孕んでいるから。


だきしめてだきしめて、混ざりあうことができたとしても。



結局それは一人だし。





「かなしいね」




「…あぁ」










結局、スコーンは食べた。


やっぱり不味かった。






悲しくはないのに何故だか涙が止まらなかった。








































「…おい」


「なに?」




「満足したかよ。
俺からアルを独立させて」


恨んでるんだろう?と薄笑う。




あ、



この空気を俺は知っている。


気付いて、いつかの自分達のことを思い描いた。





「そんなことしてもあの子は戻らないだろ」






「…」






「かわらないよ、なにも」

















後記
大分前に思い付いて放置していたものをここに投下。


先日、自分のHPを客観的に見てみたら思っていたよりずいぶん作品数がすくなくてあれー?ってなった次第です。

頑張る…!


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