至る 地獄へ

進んだ側から崩れる階段。

もう後には戻れないのですね。








「君がわざわざ後戻りできない道を選ぶことは趣味かい?」


会議の後。

数十分前まで騒がしかった会議室にはもう二人しか残っていない。


先程投げ掛けられた言葉の真意がわからず、きょとんとした表情を菊は浮かべた。



「貴方だってそうでしょう?」


幾つかの選択肢が浮かび、やっと見当がついた。



「俺は自分の首を絞めるようなことはしないよ」


「いいえ。同じですよ」

「そうかなぁ」


「例えばPC。現在最新鋭の技術を盛り込んだ物でも一年後にはどうでしょうか?」


「型落ちしてるだろうね。また次の最新鋭がでてきてる」


「そうです。いつまでも追いかけ、追いかけられなくてはいけないんですよ」



それって疲れちゃいません?と自嘲気味に笑う。


「そんなの需要があるからだろう?」

仕方が無いことだよ、とアルフレッドが苦笑する。



「そうですね」

「でも俺は過去の物より更に技術のあがったものを造れると嬉しいと思うけどなぁ」


「でもいつか終わりが来てしまうでしょうね。」


改変することができない

付け入る隙のない。


「それとも資源がつきてしまうのが先でしょうか」


「そしたら代替すれば即解決さ!化石燃料の代わりにソーラーやバイオ。これまでだってやって来ただろ?」



「私が言っているのはそれさえできなくなった時のことですよ」



「それは困るね」


「試しに人でも燃料にしますか?
地球にとっては私達の存在は要らないらしいですから」


菊の言葉を聞いたアルフレッドはとある犯罪者の名前が浮かんだ。


「…エドワード・H・ゲイン」

「どなたですか?」


死体の皮膚で女装した男。
精神異常者。

幼い頃から女性への異常なほどの女性変身願望を持った彼。
彼は人体の様々な部分を余すことなく使ったそうだ。


例えばスープ皿、例えばスプーンとフォーク。


大体そんな内容を菊に伝えた。

「素敵な趣味をお持ちですね。」

「やめてくれ」

不愉快そうに吐き捨てるアルフレッド。


「君といい、ルートヴィッヒと言い、そういった発想はやめた方がいいよ」



「まぁ何にしろ。
結局は終わりを目指してしまうんですよ」

そんなアルフレッドに苦笑し、しかし彼の機嫌を損ねる気もない菊は話題を戻した。


「でも俺は自分が消えることは考えられないな」


「貴方好きじゃないですか。」
くすくす。

「え?」



「世界の終わり。人類の滅亡。
貴方の家の映画でよくあるじゃあないですか。」


「あれはフィクションだからいいんだよ。
実際に起こるなんてごめんだね」


「そうですか?」

「なに?キミは消えたいの?」
まるでそうなって欲しいみたいな言い方。


「いいえ。でも」

「?」


「わくわくしませんか?」


心の底から楽しそうに微笑み日本は言った。


「うぇぇ!?その感覚は同意できないよ!」


「世界のはしっこから少しずつ削れ落ちていくんです。その崩壊は誰にも留められません。」
「そんなの俺が止めてみせるよ!なんたって俺はh」


「ええ。きっと私や貴方が躍起になって何かを開発しようとするでしょうね。
何が良いでしょうか…接着剤なんていかかでしょう」


「どうして接着剤なんだい?」
「洒落てるじゃないですか」


「?よくわからない」



「しかしそれは重要なことではなくて。
結局、自ら首を絞め続けているということですよ」


立ち止まることが許されないことは苦痛だ。


「現在よりも劣るものはつくれないなんて!」


Jesus!と叫ぶ彼の言葉は余りにもこの話題に似合った。



“ああ、神様”









「ね?そう考えると何もかも嫌になるでしょう?」

















後記
しばらく前に詰んでいたものをいじくり回しました。

まだ修正箇所はあると思うのでそのうち。


あと、エドワード・H・ゲインって誰だよ、って方への説明。

本名 エドワード・ハワード・ゲイン
アメリカ、ウィスコンシン州生まれ。
幼い頃から異常なほどの女性変身願望を持ち(以下略)。

五十代の時逮捕され精神鑑定の結果回復の見込みはないとされ、精神病院に収容された。

っていう人。



参考文献
世界情死大全/桐生操 著/文春文庫
その他。

あと以下爺様の洒落の説明
わからなかった方だけどうぞー















接着剤は物と物をくっつける物。

普通、世界であったり、誰かとの絆をくっつける物ではありません。

出来もしない物を必死になって改良して出来るようにしようとする自分達の愚かさを皮肉っている。

または

世界が接着剤で引っ付けれる手軽さを持っている、そんな単純なものであるという揶揄。

わかりにくくてすみません。


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