がたんごとん、電車が揺れる。外はまだ明るいけれど、あたりは少しずつ涼しくなってきた。電車内は朝ほど混んではいなきて、高尾と二人で余裕で座れるくらいだった。
「久々のデート楽しかったな」
「ふん。帰るまで気を抜いてはいけないのだよ」
「遠足かよ!」
車内に高尾の声がこだまする。他の乗客も思い思いにざわめいていたので幸い意識がこちらに向くことはなかったが。
「つーか真ちゃん、帰ったらさっきのなかったことにとかなしな?」
「なんのことだ」
「はぐらかすなっての!」
はぐらかすもなにも、公衆の面前で言えるか馬鹿め。そもそも俺が約束を違えたことなどないだろう。どうせなにもなくても久々だからと自然とそうなるに決まっている。
「……考えておいてやる」
今更生娘のようなためらいなどはないのだし。俺だってお前と好きで一緒にいるのだから。
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