エアコンを効かせた室内に高尾の歌声が響く。いつもは煩いくらいの口から紡ぎ出されるそれは、耳に心地よく染み込んでいく。

「っふうー……どうだっ!」

「悪くないのだよ」

「冷てえなあ。お、やりい!九十点越えた!」

曲が終わり、高尾が得意気な顔で此方を向く。こいつは歌が上手い。というかこういったパフォーマンスが全体的に得意な質だ。
リモコンの液晶を付属のペンでつつくと、不意に隣から腕が延びてきた。指紋がつくだろう、と注意したがその指はそのまま画面を滑り、色違いのハートマークの重なった所を押した。

「真ちゃーん、そればっか見てないでもっと構ってよ」

「……デュエット?」

「やろーぜ。てかさっきから俺ばっか歌ってるし」

それは俺があまり人の前で歌うことに慣れていないからなのだが。学生時代はずっと伴奏をしていたのだし。
それに、高尾の歌を聞くのは嫌いではない。本人に告げようものなら調子に乗るに決まっているから言わないけれど。

「俺はあまり最近の曲を知らないのだよ」

「おじいちゃんみたいなこと言うなって!あ、これは?ちょっと前に流行ったじゃん」

上から三番目、男性アイドルグループの曲を高尾はつつく。ああ、これなら知っている。テレビのコマーシャルでよく流れていたものだ。
手元のマイクを掴むと、高尾が嬉しそうに笑った。こいつの笑顔は眩しいと思う。けれどそんなことで口元を緩めかけてしまう自分は、やはり毒されているなとぼんやり思った。


 


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