「はー食った食った!」

昼食を済ませ外へ出ると、照りつける日差しが出迎えてくれた。暑いけれど気持ちがいい。飯も値段に見合って美味しかったし、さて次はどこへ行こう。まだ家に帰るには早い。

「真ちゃんはどっか行きたいとこある?」

「特には。お前こそさっきから俺の意見ばかり聞いているが、どこか行きたいところはないのか?」

「だって今日の主役は真ちゃんじゃん」

そう言ってからから笑うと、真ちゃんはそうかと小さく頷いた。ものわかりがよくて何よりです。最近はあまり二人でいる時間がなかったのだから、今日くらい目一杯甘やかさせろってんだ。

「ふむ……と言っても目当てのものは全て買ってしまったのだよ」

「どうする?ゲーセンでも行く?」

丁度目に入ったきらびやかな看板を指差す。入り口あたりは人でごった返していたが、なかは涼しそうだし。

「人混みは避けたい。……そうだ、あそこがいい」

真ちゃんの視線の先を辿る。するとそこには店先に置かれた小さな看板と数本ののぼりがはためいていた。
のぼりには最近流行りの女性シンガーの笑顔。つまり、カラオケの宣伝だ。

「えっ!?いいけど真ちゃんがカラオケとか珍しくね!?」

「心外なのだよ。嫌いではないし、お前とも何度か行っただろう」

「や、そうだけどさ。いっつも俺らから誘ってたじゃん」

純粋に驚いた。まさか真ちゃんがカラオケを選ぶとは。確かに涼しいし、帰りの時間も考慮できるけれど。

「……それに」

「ん?」

真ちゃんが微かに口を動かす。眼鏡の奥の瞳は生憎日光が反射して窺えない。

「お前は歌が得意だろう。久々に聞きたくなったのだよ」

今日は俺の望みを聞いてくれるのだろう?ぽかんとした俺を見つめ不敵に笑った。
……なんでここでデレるかなあ。それってつまり俺の歌が好きだってことだろ。真ちゃんのデレは不意打ちすぎて心臓に悪い。顔が赤いのばれてなきゃいいけど。
駄目か?と首を傾げるのを必死に遮って行こうと歩き出す。それくらいお安いご用だっての!


 


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