両手に紙袋を抱え、服売り場を後にした。ありがとうございましたとはきはきした店員の声を背中に受ける。我ながら沢山買ってしまった。しかもそのなかで俺のものは一着だけ、あとのは全て真ちゃん用だ。
まあいっか、真ちゃんあんまし服持ってないし。それにね、男が服を贈るのは脱がせるためなのよ、っていうじゃん。言ったらさすがにどうなるかなんて目に見えているので口にはしないけれど。

「おーい真ちゃーん」

会計を済ませている間に先に行かせていた真ちゃんを探す。混んできたから纏めて払おうと渡された財布(結局俺が選んだぶんは俺が払ったのだが)を握り締め辺りをきょろきょろ見渡すと、左手の奥にある案内板の近くに周りよりひとつ飛び出した緑色を見つけた。あの高さにあの色では相変わらずよく目立つ。
早足で人混みを掻き分けながら進み、緑頭が揺れている方へと向かう。にしてもだいぶ人が多い。さすが日曜と言ったところか。

「真ちゃんおまたせー……って、あれ?」

難なく真ちゃんのもとへたどり着けたかと思いきや、どうやら様子がおかしい。
真ちゃんの周りを二人の女子が取り囲んでいた。清楚さを残しつつ着飾った彼女たちは、誰の目に映っても可愛らしいと形容されるだろう。そんな女性が二人。そして彼女らは口々に真ちゃんへ甘い声音で話しかけている。
つまりこれはあれか、逆ナンというやつか。真ちゃん今日はモテすぎっしょ。確かにあんな綺麗な顔の男が一人で突っ立っていたら、興味がそそられるのもわかるけど。

「俺には連れがいるのだよ」

「えー?連れって彼女さんですかあ?」

「いや、そうではなくて」

「男友達ですかあ?ならその人も一緒にお昼しません?二体二で丁度いいですよ」

何が丁度いいんだか。見かけのわりにわりとよく言えば積極的、悪く言えば強引な方たちだったようだ。
でも全然駄目だね。なってない。そんな媚びる態度に真ちゃんは靡きませんよ。ほら、真ちゃんの眉間の皺が深くなった。

「俺はそういうことに興味は……」

「真ちゃんお待たせー!っと、あれれ?なにこのきれーなお姉さんたち」

見てらんない。わざとらしく片手を上げて間に割って入り、これまたわざとらしく驚いてみせる。
ようは、こちらのペースにしてしまえば俺の勝ちなのだ。にこりと笑顔を作って彼女たちにはにかむ。さすがに黄瀬には劣るけれど、こういうのは得意な方だ。二人の頬が赤らんだら完璧。

「連れってこの人ですか!?ねえ、一緒に、」

「まじっすか?あー、でもごめんなさいお姉さん、俺たちもう食べるとこ決まってるんすわ」

素直にこれからデートだって言っても良かったんだけどな。早口で告げて、真ちゃんの右腕を些か乱暴に掴みその場を立ち去る。
お姉さんたちには恥をかかせてしまったが仕方ない。こいつの隣は、残念ながら俺がもう予約済みだ。


 


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