今日の蟹座のラッキーアイテムは好きな人の所有物って、おは朝もとうとう頭が沸いたのかと握りしめていた箸を落としたのは朝食中の話。案の定三十分もしないうちに休日の静かな高尾家の朝は終わりを告げて、控えめに玄関が開かれた。フローリングで三十分間待機を続けた俺の足は痺れていたけれどそんなことはどうでもいい。
要は、わざわざこんな常識はずれの時間に我が家を突撃した真ちゃんが目を逸らしながら、「……お前の部屋に上げるのだよ」と普段の凄みはどこへ行ったのだよとつっこみたくなるような声音で俺を頼ってきたという事実が重要なのである。

「掃除してねえけど、まあ適当に座ってて」

そんな突然の訪問を俺が拒むはずもなく。大人しく俺の部屋に着いてきた真ちゃんは近くのクッションに腰を下ろすと、大きな体躯を丸めるように体育座りをした。
無論照れ隠しのためだろう無言のまま膝に埋められた頭の端から覗くほんのり赤い耳の可愛さといったら、まじで高尾君が一瞬で狼になれちゃうレベル。いやしかしここは理性をフル動員して我慢、さりげなく隣に座ってて真ちゃんの出方を窺う。

「で、真ちゃん何か用?」

「……知っているだろう」

「えー?なんのことー?」

にやにや。きっと睨まれたけれどそれくらいでへこたれる俺ではありませんよ。この件はなんとしても真ちゃんのお口から言ってもらわねばならないだろう。

「お前だっておは朝を見ていると言っていただろう!」

「見たけど忘れちゃった!」

もちろん嘘だけど。忘れるはずねえだろあんな俺を幸せにするためにでてきたかのような結果をさ。ばっちりしっかり覚えてますよ。
けれども真ちゃんから言ってもらわなければ意味がない。なんてったって最大限のデレを拝めるチャンスなのだから!

「俺にできることならなんでもするけどー?ただし真ちゃんがちゃあんと説明してくれたらね」

ぐっと言葉をつまらせて憎々しそうに俺を睨む真ちゃんが可愛すぎて俺はどうしたらいいのだろう畜生。そんなに恥ずかしいことでもないだろうに、初だというかなんというか。

「……お前の持ち物、なんでもいい、はやく寄越すのだよ」

「なんで?」

「占いの、結果だ」

決して目を合わせることのないまま、真ちゃんはたどたどしく口を動かす。その様子にまあ合格かなと妥協してしまうあたり、俺も相当甘いと思う。

「りょーかい。ほら、これでいい?」

「高尾、やはり知っていたな!」

「えっなんのこと?」

わざとらしくはぐらかして、ベッドの上に投げてあったシャツを手渡す。実際コレも狙ってやってんだけど。俺の物ならなんでもいいんだろうし。
真ちゃんはむすっとしながら受け取ると、それを大切そうに胸に抱えた。いや、ラッキーアイテムだからってのはわかってるけど!妄想通りの光景に高尾君の理性がオーバーワークしそうでやばい。だって真ちゃんが俺のシャツを、ねえ?恋人のこんな姿を眺めて平然としていられる男などいるだろうか、いやいるまい。

「ねえ真ちゃん、ソレでいいんだろ?ラッキーアイテム」

「ふん…。一応、礼は言うのだよ」

ぎゅう、と体育座りのままばつが悪そうに目をそらして背中を丸める。自然とシャツを抱き締めるかたちになって、うん。真ちゃんあざとい。欠片も意識してないだろうけど。どんだけ俺の心の純粋な部分をいたぶれば気が済むんだよ。

「高尾」

「ん?」

ちらりと深緑の瞳が此方を向いて、俺の名前を呼ぶ。かくいう俺は肌が白いと目尻の赤さが引き立てられるなあとか考えちゃって、余計な劣情まで生まれてくる始末だ。

「やはりお前の匂いがするのだな」

俺のシャツに目をやりつつ。本日最大の爆弾を投下してきやがったこいつは。
なんなんだよもう今どきこんなに狙ったような台詞、少女マンガのヒロインだって言わないだろう。それでも無自覚だから質が悪い。どんだけ可愛いを振り撒けば満足するんだよ。天使かよ。知ってた。
とにかく、真ちゃんは俺に襲われても文句言えないと思います。



オンリーマイハニー!

(僕は君に首ったけ!)


▼とろろさんへ捧げます!とてつもなく遅くなってさまいすみません。
天然あざとい真ちゃん…!夢が膨らみますね!私の書く真ちゃんはなかなかあざとくならなくって申し訳ないですが、受け取っていただけたら嬉しいです。とろろさんのみ書き直し受け付けておりますので!
リクの際の暖かいメッセージもありがとうございました!これからもたくさん高緑書いていきます!




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -