「真ちゃん、お菓子食べる?」

「む…、なんだそれは」

「おにーさんの手作りクッキーなのだよ」

はい、と自分の半分くらいの高さにある可愛らしいお口を目掛けてオレンジ色のクッキーをダイブ。かぼちゃ味のそれはきちんとかぼちゃを模した形をしていて、そのうえ丁寧にチョコペンで目と口まで書いてあるのだ。我ながら自信作である。

「んんっ……、……詰め込むな、バカ尾」

「まだまだあるよ」

白い喉がこくりと動いて、眉をひそめた真ちゃんが小さくむせた。それを見て自身の口許がゆっくりとつり上がるのを感じる。手元のクッキーをもう一枚、真ちゃんのお口に無理矢理押し付けて、いっそ指ごと食べろというふうに柔らかい子供の唇に触れた。

「ねえ真ちゃん、真ちゃんはお菓子持ってないの?」

「んむっ…、みればわかる、だろう」

歳の割りには大人びた、穢れないシャツと膝たけのズボン。お菓子を隠す隙間なんてどこにもないことは、最初からわかりきっていたことだ。

「じゃあ悪戯だね」

「おいっ、」

でもね、駄目だよ。細い腰に腕を伸ばして、羽が生えたみたいに軽い身体を片手で抱き上げる。お菓子が欲しいのは子供だけじゃないのだよ、真ちゃん。




犯罪臭のする高尾氏



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