連れ立って2人の猟師
 無事にここから出してあげるからね、と微笑んでくれた女性、ジルをしんがりに、先頭にクリス、真ん中で守られるようにして私が縦に並び馬鹿でかい校舎の中を只管走っていた。
 2人に連れ立たれるようにしてでた教室の外は、地獄絵図なんて言葉では表せないくらい悲惨なものだった。もちろん教室の中もひどかったけれど。
 陥没した目や、肉が腐り落ちた体。廊下を赤く塗りつぶしていた血の海。
 ぐっと競りあがってきたものを、私は必死に押さえつけた。少しだけ口の中に胃の中の味が広がって更に気分が悪くなったが、今はそれどころではないだろう。
 後ろから掛けられた気遣う声に出来る限りの笑顔で頷き、少し距離が開いてしまったクリスへと近づく。

「・・・・・・どうしてこんなことになったんだろう」

 ポツと呟いた言葉。生まれ変わったこともそうだし、激動の今生もそうだし。
 はぁ、とため息を吐けば、誰かがウイルスをばら撒いたんだ、と背中を向けたままのクリスが口を開いた。どうやら、今回の事件についていっているのだと思ったらしい。あながち逸れも間違ってはいないので、誰がそんなことをしたのか、と返す。

「誰が犯人かはまだわからない。ただし、俺たちは確実に見つけ出す」

 だから、安心してくれ。とようやく顔だけ此方を向いたクリスが微笑んだ。
 体が大きい人だな、とは思ったがまさか心も大きいとは。こわばっていた自分の頬が、少しだけ綻ぶのを感じた。


 この学校は5階建ての建物が2つ連なっている大きな大学だ。
 1階はすでにゾンビたちが占拠してしまっていて、とても脱出できる状況ではないらしい。5階からはB.O.Wなる化け物が放たれている為、そこを潜り抜けるのも守る人間がいるとなると厳しいものがあるようだ。
 そこでクリスとジルから聞かされた脱出ルートは、2階から延びている連絡通路からの脱出。2人もそこから入ってきたらしい。それなりの高さがあるが、先にクリスが降りて受け止めてくれるらしい。なんだか恥ずかしいことになりそうな気がしないでもないが、まぁ生きて此処から出られるなら四の五の文句は言っていられないだろう。
 一応全部の階に非常階段はついているが、ジルいわく、その非常階段を空けるためのロックが壊れているらしい。非常階段にそういったややこしいものをつけるのもどうかとは思うのだが。

 今いるのが3階。ここから連絡通路までは少し距離がある。少しでも足を引張らないように、私は気を引き締めてクリスの後ろをついていくことに集中した
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