のんびりと本を読んでいれば、どうぞと紅茶を出される。その紅茶を出してきた人物が誰かも、その紅茶が美味しい事も知っている私は、なんのためらいもなく赤茶色の液体を口に含んだ。
うん、美味しい。
淹れた本人も満足の味らしく、私と同じ感想が近くから聞こえてきた。
「あ、レオン様はっけーん」
彼女の声に私はティーカップを置くと、慌てて窓の外をみる。私の家がバレたりなんかしたら大変だ。しかし窓の外には彼の姿どころか、人の気配すらない。
なら、ユキコは一体どこで見たのか。
首を傾げながら振り向けば、紅茶を片手にパソコンを弄るユキコの姿。
いや、いやいや、まさか。さすが無いだろう。そうは思いつつも、いやな予感がジワジワと募ってきている。
恐る恐る彼女が見つめるパソコンを覗き込み、頭を抱えた。
そこに映し出されているのは、ポニーテールの女性と共に街を歩くレオンの姿。しかも、ポニーテールの女性にだって、見覚えがあった。
クレア・レッドフィールド。ラクーンシティの事件の時に新米警官と行動していた人間だ。
「ユキコ、これは何……」
「んっと、監視カメラの映像!レオンさんが出没する場所を調べてー、そこにちょちょいっと」
カメラ仕掛けちゃった、なんて可愛い笑顔でいう姿がなんとなく恐ろしく感じた。しかもそのカメラの存在はターゲットにシッカリとばれているようで、クレアがこちらを指差している。
ユキコはそれに気がつくとパソコンの音量をグイっとあげた。
「ねぇ、レオン?あんなところにカメラなんて前、あったかしら……?」
音まで拾えるのかこのカメラは。
このカメラを何処で手に入れたかも分からないが、どうやって設置したのかも謎である。恐る恐る訪ねてみるが、愛だよ!と愛らしい笑顔を振りまかれてしまえば私にはもうなにも言えなかった。
画面にはカメラをみるなり頭を抑え項垂れるレオンが映っている。
「あぁん、レオン様。相変わらず素敵……!隣にいるのは誰かかな……彼女かな?」
トーンの低くなった声が、やけに部屋に響いた。あれだけの修羅場を超えてきているはずの私が、隣にいるユキコを見る事に恐怖を感じている。
「んもう、私がこーんなに思って胸を痛くしてるのにっ!……やっぱり彼女かな」
もう一度呟いた疑問系では無い言葉に、私は慌てて否定をするしかなかった。
「見つめるだけで胸が痛い」か、相手は頭が痛いでしょうね
(早まらないで、お願いだから)
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