アドバイス?無理よ
    ねぇ私好きな人ができたの!
    疲れきって帰って来た私に、同居人はそう告げて来た。
    私はこの二週間、神経をすり減らす様な任務をこなして来たのだ。
    そんな私には残念ながら同居人のそれを喜べる様な余裕はなく、あらそう、と我ながら冷たいと思うような返事を返すので精一杯である。
    そもそも、せめてお帰りなさいの一言くらい欲しい。一緒に住んでいるのだから。
    しかし、その同居人は私の気など知らぬと言わんばかりに愛らしい笑顔を浮かべては、どんな人だと思う?どんな人だと思う?と自室に足を進める私の周りをウロウロ。まるでジャレつく犬の様だ。

「あぁ、もう…。わかったわ、どんな人なのユキコ」

    はぁ、とため息を一つ。呆れを隠そうともせずに振り向けば、視界に映るのはやはり愛らしい笑顔。いつもよりも楽しそうに見えるのは、その"好きな人"とやらのせいだろうか。
    私が渋々と投げかけた質問に同居人、ユキコは更に顔を綻ばせて口を開いた。

「サラサラのブロンドヘアーでー、青い瞳がすっごく綺麗で……」

    ブロンドヘアーに青い瞳だなんて、夢物語に出て来る王子様のようだと思った。いや、私の記憶にもそんなような人物はいるのだが。

「レオンって名前のスーパーマンなの!」
「What…?」

    いやいや、まさか。
    私は脳裏によぎった人物を頭を振って消した。レオンだなんて名前の人間くらい、いくらだっているだろう。彼、と決まったわけではない。

「フルネームはレオン・S・ケネディって言うんだって!」

    素敵なスーパーマンだよね!と手を合わせてその場でクルクルと回り出すユキコ。それをどこか遠くで見てるような錯覚を覚えながら、私は投下された爆弾に頭を抱えたのだった。


アドバイス?無理よ。
(同居人の暴走した恋の始まり)
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