そーしゃるなねっとわーくに捧ぐ、僕の幸福 | ナノ

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――不覚だった。

 俺はおひらきをしたあと、多少と後悔していた。こんなに酒弱かったかな……。ふらふらとした足取りで自宅に向かう。頭が痛い。吐き気もする。気分が悪いことこの上ない。幸い、家は割と近い。俺の住むアパートの前にきて異変に気づく。

――なぜ、俺の部屋に電気がついているんだ?

とりあえず入るしかないよな……。うん。と、重たい鉄の扉を開ける。静まりかえった部屋に聞きなじんだ、すんだ声が聞こえた。つい先日も電話した相手、クリスマスや誕生日もともに過ごした相手、誰よりも大切と思った相手、優花の、「おかえり。」の第一声で酔いもさめた。

「え、優花仕事は?」

おそるおそる尋ねる。
優花はきりりとした美しい目をこちらに向け、「早く終わったの。」と答える。
「それより、さ」
優花の目が切なく光った。ゆっくりと口を開き、言葉を紡いだ。
「今日、邦男帰ってくるの遅かったから会社の前まで向かいに行ったんだよ。でも、やっとエントランスに来たって時、邦男女の人と一緒で……。」
今にも泣き出しそうな優花はそこで声をつぐんだ。
俺は必死に弁解した。
「違う!あれは同期の飲み会で断り切れなかったんだ。あのときはエントランスで待ち合わせをしていたんだ!他意はない!」

それでも優花は笑ってくれない。
なぜだ。何がいけないのだ。

「……バレッタ。」

「え。」

「私、あそこでわざとバレッタを落としたの。それに気づけば連絡くらい入れてくれるって信じてた。邦男が浮気したなんて疑ってない。わたしは電話でなるべく早く帰るよって言ってくれるって信じてた。馬鹿馬鹿馬鹿!私があそこにいたこと、本当は気づいたんでしょ?どうして、どうして無視するの?私のこと嫌いになったの?飽きたの?ねえ、なんで?どうして!?」

「それは……。」

 たしかに、俺はあそこで優花がここへ来た可能性を考えた。けれどそれほど問題にしなかったのだ。けれど、その程度。おれにとってみたらその程度なんだ。

「私、ずっと待ってたんだよ!?連宅はくれなくても思い出して帰ってくれるって信じてた。ねえ、どうして?こんなのいやだよ。もう、私以外の人と遊んだりしないで!!」

 かちん。

最後の言葉に俺は血圧が上がるのを感じた。自分以外とは遊ぶな。だと?俺を束縛しようって言うのか?ふざけるな。


この後、俺は優花にきつく当たってしまった。そのことを多少は後悔したが、自分が間違いをしたとは思っていない。



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