ストックス中央病院泌尿器科診察室B




ヒソカとストックス中央病院泌尿器科に関する小ネタのまとめです。第二部十二章「泌尿器科に行く羽目になったヒソカの話」を書いた時のネタなので、ヒソカはまだイルミやクロロの存在を知らない設定です(腕輪には気づいている)。

第三部が終わりがけなので、精算の意味も兼ねて投下します。






ある晴れた日の午後、ミズキはいつものようにガラナス山でトレーニングをしていた。その傍にはいつの間にか来ていたヒソカが、我が物顔で木陰のそばの丸太に腰を掛けている。ヒソカが側に居てもミズキに追い払う様子は見られない。何度となく遊びに来るヒソカを完全に受け入れているようだった。

「痛たたたた………」

突然ヒソカの声が聞こえ、ミズキは正拳突きをする手を止め振り返った。

「おい、ヒソカ。どうしたんだ?」

見ればヒソカは樹の幹に手を当てて背中を丸めている。しかめた顔から何か痛みに堪えているのは明白だった。

「ああ、ちょっと痛むんだ……」
「痛む?どっか怪我したのか?」
「まあ、そんなところさ」
「ハハッ、お前でも怪我なんかするんだな。……どこだ?どこ傷むんだ?」
「それは……」
「なに言いよどんでやがんだよ、このミズキ先生が診てやるって。なに、傷口を指でグリグリ押すなんてことはしねえからよっ!」

ミズキはニヤニヤ笑いながら近づいた。ミズキより数段格上のヒソカが傷を作ることはほとんどなく、その顔は明らかに何か悪戯を仕掛けてやろうといった顔だった。しかし、


「実はキミに蹴られた所が痛むんだ……」


そう言われミズキは狼狽した。数日前、ミズキはハンモックで仮眠を取っている時にいきりたった股間を腰に押し付けられ反射的にヒソカの股間を蹴り上げてしまったのだが、その時に怪我を負わせてしまい、さらにそれが数日経った後でも傷んでいるだなんて、まさに青天の霹靂だった。

「え!?あ……いやぁ……アレは、その……確かに蹴ったオレも悪いけど、元は言えばお前が……その……」
ミズキの目は泳ぎ、額からは脂汗が垂れている。
「くっ……」
ヒソカは小さく声を漏らし、腹部を押さえる手に更に力を入れた。ヒソカの顔色は悪かった。あんなに痛がるなんて怪我は想像以上に酷いのかもしれない。
「だ、大丈夫か!?」
ミズキは駆け寄った。後遺症や不能の原因になったらどうしよう。不安が胸をよぎる。
「あぁ……傷口が開いたのかもしれない……」
「き、傷口!?お前、そんな酷い怪我をしてたのか!?大丈夫なのか!?」

肉体的に数段格上のヒソカが傷を作りさらに数日経ってもその痛みに顔を歪ませているのだ、損傷は相当なものだろう。機能不全。排尿障害。精巣摘出。ぼんやりと存在していた不安がいよいよ明確な形を伴なって膨れ上がり、ミズキは樹にもたれかかったヒソカの腰をがしっと掴んだ。


「ど、どんな怪我なんだ!?」
「ああ、時折引き攣るように痛むんだ。もしかしたら、血が滲み始めているかもしれない……」
「血!?ヤバいじゃねえか、傷口が開いたって言ってたよな、どこだ?」
ミズキはヒソカの股間を服の上から触った。
「そう……そこ……もう少し上」
「え?どこだ?血なんか滲んでねぇぞ!?」
ミズキはさらに顔を近づけて、布に血液が付いていないか凝視した。
「どこだ?血なんて見当たらねえぞ!」
「ん……そう、そこ……ン、なかなか……そう、そこをもっと強く撫でてくれれば……」
「……撫でる?強く?」
ミズキは手をピタリと止めた。
「おや?肩を震わせてどうしたんだい?」

ヒソカの澄ました声が頭上から降ってくる。ミズキは拳をぎゅっと握ったまま、プルプルと震えていた。

「………おい、ヒソカ、てめぇ騙しやがったなっ!血なんかねぇじゃねか!!その前にお前のもン、元気じゃねぇかっ!!!」

ヒソカの股間は誰がどう見ても元気だった。怒髪天がつく。ミズキは怒りの形相でヒソカに食いかかった。

しかし、ヒソカは涼しい顔で「クク、そうだったかな?」と言葉を返す。


「『そうだったかな?』じゃねえよ、このクソ野郎!服の上からとは言え触っちまったじゃねえか!!」
「ぎこちないキミの手つき、なかなかそそるモノがあったよ◆」
「ふっっざけんなぁーー!!!」


オーラを込めた右ストレートが降りかかる。しかし、ヒソカはそれをひらりとかわし、堪え切れないといった様子で目を細める。ミズキの突きを受けた樹が、音を立てて倒れてゆく。

「おや、怪我人に怒鳴りつけるだなんて酷いじゃないか。ほら、ここに病院での処方薬もあるんだよ?」
ヒソカは懐から白い袋を取り出してミズキの前でヒラヒラとさせる。
「ンな問題じゃねえだろっ!この変態!!……お、男の人のモノを……手、手で……オレ……まだ、なのに……う、うう……ああああーー!!ヒソカむかつく!今日こそぶっ飛ばしてやる!!」

足にオーラを込めてダンと地面を蹴る。距離が一瞬で縮まり、ミズキはそのままワンツーパンチ、回し蹴りのコンボを放った。しかし、それもヒソカはさらりと受け流す。

「まだ、組手の時間には早いけど……。いいよ、相手してあ・げ・る◆」
「そういうわけじゃねえよ……くそっ!覚悟しろっ!!!」


誰もいない森の中で、二人の拳のぶつかり合う音が絶え間なく響く。ミズキの拳を受けるヒソカの表情は戦っているにも関わらず柔らかく、いっそ微笑んでいるといっても良いほど穏やかだった。


「てめ、余裕そうに笑ってんじゃねえよ!!」
「余裕そう?笑う?……ふふ、そういうワケじゃないんだけどね。いいよ、ミズキ、何度でもおいで。ボクはいつだって受け立ってあげるから」


優しい声だった。しかし、声とは裏腹に容赦ない突きがミズキを襲う。風圧で皮膚を切るほど鋭い突きに、ミズキの瞳がさらに欄と光る。舌をペロリと舐めてヒソカに向き合ったミズキの顔に怒りはもうなく、ただただ研ぎ澄まされた真剣な瞳だけがあった。

熱量を持った激しい時間が過ぎてゆく。言葉が存在しない静かで熱い時間だった。






終わり








今思えば二人にとって一番幸福だったと言える時間の話でした。イルミが登場した時はまだそうでもないですけれど、クロロと関係がある事を知った以上、もう以前のようには戻れないですよねぇ………。






次は、泌尿器科の老医師関連のネタ話です。この話は泌尿器科の老医師に関するコメントを月紗さんから頂いた時に、そのお返事として即席で作ったSSとなります。キャラ崩壊があるので注意願います。








ここはストックス中央病院泌尿器科。この辺りで一番大きい病院の東棟三階の南側にあり、腎臓・尿道・尿管・膀胱・前立腺・陰茎・陰嚢など、主に尿路系・生殖器系について診察を行う場所である。

そこの一室『診察室B』に在中する医師は、白髪の丸眼鏡の奥に老成した鋭くも穏やかな瞳を持つ人物で、泌尿器科の世界では名医と言われており、そこを訪れる患者はひっきりなしであった。

訪ねる患者たちを次から次へと診断してゆく日常を過ごしていたある日、老医師は扉の向こうから異様な雰囲気を発する男が入ってくるのを目にした。

季節外れのファーのついた黒いコートにオールバック髪、額には何かを示す刻印のようなものが刻まれている。鋭い眼光と周囲を凍てつくすような空気を放つ男に、老医師は一目で表の世界の人間ではないと感じ、思わずゴクリと唾を飲んだ。

しかし、この部屋に来た以上二人の関係は医者と患者である。裏の世界の人間だからといってむやみに追い返す事も無碍にする事も出来ない。

老医師はなんとか平静を取り繕い、「どうしました?」と医者としての言葉をかける。その言葉に男は顔を上げ、人を射殺しそうな鋭い眼を老医師に向けた。ゴゴゴゴ……と音が鳴りそうなほどの圧迫感に襲われ、老医師は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。まるで数時間もそうしていたような数秒の時間が流れ、男はようやっと口を開いた。


「……最近、胸が痛いんだーー」


その言葉に思わず老医師は、「はへ?」と間抜けな顔をしてしまった。しかしどうやら話を聞くと最近知り合った少女のことを考えると胸が痛むらしい。

老医師は、どう答えたらいいものかその前に何と言葉を返したらいいものかと頭を悩ましたが、まるでマフィアのドンのような存在感を放つ男に下手な返答はしちゃダメだーーと脳が警鐘を鳴らし、老医師は引きつった笑いで「うん、うん」と適当に頷くことしかできなかった。

しばらく経つと、ひとしきり胸中を語ったのかオールバックの男は老医師がまともな言葉を返していないのに「なるほど、聞きしに勝る名医だなーー。ここに来ただけで随分と症状が軽くなった」そう言ってさっさと踵を返して診察室を出て行ってしまった。


緊張の糸が切れ、老医師は椅子の上で虚脱した。心臓がギシギシ鳴り、服は冷や汗で冷たくなっていた。しかし老医師はパタンと閉じた扉を見ながら一人呟かずには居られなかった。


「あの……ここ、泌尿器科なんだけどーー」






終わり




はいっ!!!ギャグネタでした!!!こんなアホな感じにクロロさんを扱ってしまいすみませんでした!!!!(土下座)

結構、この老医師が気に入りまして、「ヒソカ以外にここを訪れるキャラが居たらいいなぁー」なんて妄想の元書き散らかしたものですね、はい。

ちなみに、脳内にはイルミverとかシャルverとかもありまして。シャルは、面白半分で遊びに来て、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、看護婦をナンパして帰るとか。イルミもとりあえず来てみたけど、老医師の質問に的外れな答えを返すだけ返して、「ん。なんか、時間の無駄だったみたい。」みたいなことを言って帰るとか。

話のオチはいつも老医師の「あの……ここ泌尿器科なんだけど――」で締めるという。

はい、そんな取り留めない事考えていましたが、ネタを思いついてから半年以上ゆうに経っておりますし、文字化する機会は今後もないと思われますので、ここで供養を兼ねて投下させて貰いますね。

閲覧ありがとうございましたー!






ちなみにヒソカネタとクロロネタではどちらの方が好みでした??
お答え頂けると嬉しいです!




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