観覧車の頂上にて
【観覧車が頂上に来た時の夢主の反応】
ということで書いたネタ先行型のショートストーリーです。普通にmemoの方で投下しようかとも思いましたが、memoで投下するには長過ぎるかな?と思ったのでこちらの方に。
第二部終了時点での、関係性で書いています。
・ ヒソカ
「おい、ヒソカ!見てみろよ!!景色がすっげぇー綺麗だぞ!?」
仕事の合間に連れていかれた遊園地。その遊園地の観覧車が頂上付近に差し掛かった時のこと。座席に膝を付いて無邪気に窓に張り付くミズキの背後に、ヒソカはニヤリと口角を上げながらギシリとにじり寄った。
「キミは知っているカイ?観覧車の頂上ではね……こうやって……」
そう言ってヒソカは窓に手を当てて顔を近づける。
「お、お、お……おい!ヒソカ……!?」
突然近づいたヒソカにミズキは怯えた声を上げた。
「ヒ、ヒソカ!!お前自分の体重考えろよっ!!!そんなに筋肉ムキムキなんだから自分の体重が重いって事くらい知ってるだろ!?み、見ろよ!!観覧車が傾いているじゃねーかっ!!!」
壁にべたりと背を付け、ミズキは目を白黒させた。その視線はヒソカを越えて、シーソーのように傾いた反対側の座席に向いている。どうやら、迫ってきているヒソカより、傾いた観覧車に意識が向いているようだった。
「全くキミは……」
そう言うとヒソカは、今一度体重を掛け観覧車をギシリと揺らしてミズキを驚かせた後、何もせずに元の席へと戻ったのだった。
「はぁ……お前なぁー、そうやって人を驚かせるのやめろよなぁ。観覧車のネジが飛んだらどうしてくれるんだよ、注意書きにちゃんと禁止事項として書いてあるだろ、全くもう……」
ぶつぶつと言いながらまたキラキラとした顔で外を見始めたミズキを、少し離れた所からそっと見つめるヒソカのその目は、どこか優しさに満ちていた。
*
不憫だけど、どこか良いお兄さん風味が漂うヒソカ、萌え。
*
・イルミ
「なぁ、イルミ!見てみろよ!外、綺麗だぜっ!」
「あ、ホントだ。」
「なんだよ、もぉ〜、反応低いな、もっと感動しろよ!ほら、あっち見てみろよ、ちょうど山の向こうに沈む太陽が見えるぜ?」
無邪気に窓に張り付いていたミズキの振り返った横顔に、沈みかけた夕陽のオレンジ色の光が掛かっている。笑顔でキラキラと輝く瞳が、さらに輝きを増している。まるで散歩をねだる犬に散歩紐を見せた時のような楽しみに満ちたその笑顔に、イルミはふっと目尻を緩ませた。
「なんか、かわいい。」
「……え?……えぇ!?」
ミズキはその言葉に目を見開き、視線を右に左にと彷徨わせた。
「なんか、犬みたい。」
「あ……あ、あぁ……犬みたいってか……。はぁ、ビックリ……っておい!?犬ってオレのことか!?」
「うん。」
「はぁーー、犬ってなんだよ、犬って。もぉ〜」
そう言うとミズキは頬を膨らましながら、どかっと椅子に腰を掛けた。
「え?なんで?犬、いいじゃん。庭にはもうミケがいるからダメだけど、室内でだったら飼ってあげてもいいよ?」
「ちょっ!飼うってオレをか!?」
「え、ダメ?」
「ダメに決まってんだろ!!なんだよ、犬って、執事よりも外部サポートスタッフより随分とランク下がってんじゃねーか!!」
座席の上であぐらを組み、体を前後に揺らしながらミズキはぶつくさと文句を言った。そんなミズキを見ながらイルミはふと思いついたように口を開く。
「しょうがないな。じゃあ、チュロス買ってあげる。」
「え?チュロス!?」
「ほら、観覧車の前にあった……」
「あの、すっげぇー良い匂いしてたあれか!?」
「うん。」
「よっしゃぁー!あれ、気になってたんだよ。なぁ、イルミ、買うならもちろんはちみつ付きのやつだろ?」
「うん。」
「うっし!さすがイルミ、太っ腹!!」
先ほどまでの不機嫌はどこへやら、ウキウキとした顔で窓の外からチュロスの売店を見始めたミズキに、イルミは「やっぱり犬みたいだ。」と思ったのだった。
*
現時点だと、イルミとの関係が一番良いような気がするなぁ。イルミとのほのぼの妄想は癒される。
*
・クロロ
「ほら、見てごらん。景色が凄く綺麗だよ?」
そんなクロロの声かけに、ミズキは膝を揃えて座っていた座席から視線を上げて外を見た。
「本当……綺麗……」
蛇行する赤いジェットコースターに、古城を思わせるクリスタルキャッスル、着ぐるみが手にしている色とりどりの風船。そしれ、地上にいる時は見えなかった地平線と尽きることのない青空が見渡す限りに広がっている。
「それに……ね、」
クロロの声が頭上から聞こえ、ミズキは慌てて振り向いた。窓から見える外の景色に見惚れていた間に、いつの間にかクロロが側まで来ていたのだった。30cmと離れていない所にクロロの整った顔がある。突然の接近に、ミズキの心臓がトクンと高鳴り、頬に朱が走る。
「え……ク、ロロ……」
思わず顔を反らすミズキの背後の壁にトンと手を付き、クロロはさらに距離を縮める。
「知ってる?この観覧車にはね、ジンクスがあるんだよーー」
クロロに前髪がさらりと音もなく揺れ、クロロの顔がさらに近づく。思わず目をつぶったミズキの唇にクロロの熱が重なった。
心臓が張り裂けそうなほど高鳴っている。唇が離れ、ぎゅっと閉じた瞼を開けたミズキの目に入ったのは、不敵に笑うクロロの顔だった。
「ーーっ!もう!」
「ははっ!」と軽やかに笑うクロロに、拳を振り上げてそう言うだけでミズキはいっぱいいっぱいだった。真っ赤になっている頬から熱は引きそうになかった。
*
げ、ゲロ甘……。クロロが夢主に興味がある間はいいけど、興味なくなったらどうなるんだろう。絶対「世に溢れる『恋人らしいこと』をして落としてやろう」とか思って行動してそうですね、クロロは。
「絆」という点では、ヒソカやイルミと一歩も二歩も劣るクロロさん。「恋愛ゲーム」の対象者としてではなく、ちゃんと夢主に興味を持つようになる日は来るのだろうか。
そして、ミズキの方もミズキの方で、「過去」への未練=「恋愛が身近だった平和な世界」への未練、という色眼鏡抜きでクロロのことをちゃんと見る日は来るのだろうか。
*
なんて思いながら書いたSSでした。皆さんは、どの関係性が好きです?
最近、「イルミ萌え!」「イルミと夢主のイチャイチャシーン読みたい!」との声をいただいているので、イルミ相手で番外編を書こうかなぁ……と思ったらこんな感じのネタが出来ていた謎。
長編が思うように書き進まないので、もしかしたらこんな感じの番外編ばっかり増えるかもしれませんね。
[prev|back|next]