バグ



※トリップ主



 私が、本来いる筈のない私が、この世界に来てしまったことによる"バグ"。私はそれに悩まされている。

「名前ちゃ──────ん!!」

 これだ。この金髪だ。善逸って確か、いや確実に、禰豆子ちゃん禰豆子ちゃんと騒がしい人だった筈だ。それなのに、私が禰豆子ちゃんの立ち位置になってしまった…。ぎゅむぎゅむと抱きつかれながら、そんなことを考える。本来、こうされるのが禰豆子ちゃんであれば、間違いなく炭治郎が「禰豆子から離れろー!」と飛んできて引き剥がすだろうが、私なので誰も止めてくれない。「ああまたやってる」で終わるのだ。ふざけんな。善逸はいつも、可愛いねぇとかいい匂いがするとか可愛い音がするとか、よくわからないことを言ってデレデレとしてくる。可愛い音ってなんだ。

「ねぇいつも俺が抱きついても抵抗しないけど、それってつまり俺のことが好きってことだよね?」
「結婚しよう!」
「ねぇ聞いてる?無視しないで!!」

 耳元でぎゃあぎゃあと騒がしい。そうやってすぐ結婚結婚って、どうせ色んな女の子にも言ってるんだから信用しちゃダメだよ、苗字名前。

「善逸とは結婚しない」

 そう言うと、「なんでえ!?」と余計にうるさくなってしまった。

「そうやっていっつも冷たいけどさ、俺が抱きついたりしても、嫌がってる音しないよね」
「……え」

 お、音…?
 そうか、善逸って、音で感情がわかるんだっけ。

「あ、今焦った?」

 そう言いながら善逸はニヤニヤしている。全部わかってるからだ。いつも善逸が抱きついてくるのも、デレデレしてくれるのも……私が喜んでること。炭治郎もわかってるんだ、匂いで。だからいつも、善逸のことを止めないのか。確かに、相手の女の子が嫌がっていたら、流石に相手が禰豆子ちゃんじゃなくても止めるだろう。炭治郎なら。
 そう気づいた瞬間、とてつもなく穴に入りたい気分になった。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。言葉にしてないのに感情がバレてしまうなんて、チートすぎるだろう!そうやって顔を真っ赤にさせている私を、善逸は「可愛いねぇ」と頭を撫でてくるもんだから、余計に"その音"が伝わってしまった。

「結婚しよう!」
「しないってば!」

 いや、きっと、善逸に伝わっているであろうこの音も、バグにすぎないのだ!







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