毒
「ナマエさんって……リッパーさんのことが好きなの?」
「えっ?」
エマちゃんからのまさかの言葉に、思わずわかりやすいくらい反応してしまう。そんな私を見て、エマちゃんはやっぱり、と笑った。
「そんなにわかりやすかったかなぁ……」
「うん。だってリッパーさんがハンターの時はすごく嬉しそうだもの!」
「バレバレだったかぁ。」
少し恥ずかしくてへらりと笑う。サバイバーなのにハンターのことが好きなのバレちゃった…と、思ったが、エマちゃんは全く気にしていない様子だ。寧ろ、目がキラキラと輝いている。エマちゃんはまだ10代だし、"恋バナ"が好きなのだろう。
「エマちゃんには、好きな人いるの?」
恋バナを楽しみたい様子のエマちゃんに、一応そう聞いてみると、テレテレと顔を赤らめとても可愛い。
「えっとね……秘密にしてくれる?」
「もちろん。」
そう言うと、エマちゃんは話してくれた。
エマちゃんの好きな人は、"スケアクロウ"さんと言うらしい。話してくれるかわからないけど、今度会わせてくれるそうだ。それはとても喜ばしいことなのだが……スケアクロウって、カカシだよね?確か、エマちゃんがいつも手入れしている庭にカカシがあった筈だけど……。
「ナマエさん?」
「え、と、何?」
つい考え込んでしまっていた。慌てて返事すると、「大丈夫?」と心配されてしまった。
「大丈夫だよ。」
そういうと、よかったと笑顔を向けてくれるエマちゃんは天使のようだ。そう改めて実感していると、
「ナマエさんは、どうしてリッパーさんのことが好きになったの?」
と、エマちゃん。
「それは……」
どうして、だっけ?
何がきっかけだっけ?何かしてもらったんだっけ?それとも一目惚れだっけ?いや……そうだ、私は、彼の描く絵が好きで……いや、それは何の話?リッパーさんの描く絵なんて見たことないよ。わたしはなにをかんがえているの?
「ナマエさん!?」
激しい頭痛で思考がぐちゃぐちゃになって、今の自分の様子すらわからない。
「薬、薬飲まなきゃ……」
「エミリーを呼んで来るわ!」
私は一体、なんでこんな風になってしまったのだろう?私は何か忘れている?──いや……忘れるべくして忘れたのだ。彼のことを覚えたままだと、きっと私は壊れてしまうから。