一生諦められない恋だろう



私は一目惚れというやつをしてしまった。相手の名前はカールさん。よくゲームで一緒になることが多いのだけど、まだ少ししか話したことがない。というか、「こんにちは」くらいしか話したことがないかもしれない。カールさんはどちらかというと、いや、かなり話しかけづらい雰囲気を醸し出しているので、いつも話しかけようか迷ってしまうのだ。というか、カールさんは周りの人達を避けている……と思う。もちろん、それには私も含まれている。だから、仲良くなるなんてたぶん無理なことだ。でも、私はどうしてもあの長い睫毛からこちらを覗いた瞳を忘れられなかった。その時は焦ったように勢いよく目を逸らされたが……私はもっとあの瞳を見つめてみたいと思った。そして……まだ見たことのないマスクの下を見せてほしいだなんて、我儘すぎるだろうか?

「ねぇ、カールさん。」
「な、なんですか?」

私たちは、またチームメイトとして一緒にゲームに行くことになった。待機中に話しかけてみるも、彼はすごく気まずそうに目を合わせようとしない。思わず、

「別に、そこまで気を使わず接してもらって大丈夫ですよ……?」

と言うと、彼は更に気まずそうに口を開いた。

「僕、生きている人が、苦手なんです……」

彼は困ったように、ぼそぼそとそう言った。その様子は、目を泳がせよく見ると額に少し汗をかいている。
私は、「生きている人が苦手」という言葉に、私の好意を全否定されたかのようなショックを受け、うまく返す言葉が思いつかずに固まってしまった。

「ご、ごめんなさい。」

そう謝られて我に帰る。

「……いやっ、えっと、別に大丈夫ですよ!ただ、話しかけてしまってすみません……。」
「あ、えっと、貴方のことが苦手というわけではないんです。き、緊張して!」

とか言いつつも、カールさんは冷や汗が止まらないようだし、私に気を使っているんだろう。申し訳ない。

「いや、大丈夫です。ゲーム、頑張りましょう。」
「は、はい……」

これで会話は終了した。私と彼の最初で最後のやりとりだろう。
だって──


「はぁ……はぁ……」

私はもうすぐ死ぬのだから。
血が止まらない。じわじわと服に大きな赤いシミができ、だんだんと地面に広がっていく。ハンターは私を放置してゲートへと向かっていったが、もう開いているはず。だから、カールさんや他の二人は逃げれるだろう。3人逃げたら勝ちなのだから、私が犠牲になろう。そう思い、私は目をつぶって自分の意識が無くなるのを待つことにした。死がじわじわと近づいて来る。でも、怖くなかった。
……ねぇカールさん。
死んだら私のこと好きになってくれる?

「ナマエさん……!」

ふと、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。遂に幻聴まで聞こえるようになったのか。そう思うも、体を揺すられて幻聴ではないことに気がつく。驚きのあまり重たい瞼を開けると、カールさんが私を懸命に治療していた。走ってきたのか、はぁはぁと息を切らしており、マスクが苦しかったのか外しているではないか。初めて素顔を見れたものの、口角を上げることすらできない。

「カ、ルさ……」

声があまり出ず、うまく名前を呼べなかった。そんな様子の私に、カールさんはぽろぽろ涙を流しながら「死なないで、ナマエさん……!」と言う。
これは、夢?夢なのか?カールさんが私のために泣いてるだなんて、そんなことありえるの?困惑しつつも、血が足りなくてぼーっとする頭ではこれ以上考えることができなかった。カールさんの治療のおかげで私はなんとか立ち上がることができ、手を引っ張ってもらって無事ゲートから脱出することができた。
そして、やっと意識がはっきりとしてきて、何が起こったのかようやく理解する。

「えっと、カールさん……なんで助けに来てくれたんですか!3人逃げたら勝ちだし、リスクもあったのに。」

そう口にしてから、お礼より先にこんな言葉が出てしまうなんて、とハッとするがカールさんは気にしていない様子で口を開いた。

「……ナマエさんに死んでほしくなかったんです。ナマエさんは、優しい人だから。」

優しい人だから。たったそれだけの理由で私を、命がけで助けてくれたのか……この人は。
気づいたら涙がぽろぽろと溢れていく。そんな私に、カールさんはおどおどとしてどうすればいいかわからないようだ。

「カールさん。好きです。好きなんです。……返事はわかってます。でも、諦められません。なので、好きでいさせてください。お願いします。」

そう伝えると、カールさんは告白され慣れていないのか、どう対応していいのかわからないようだ。顔を真っ赤にさせ、口をパクパクしながらこくこくと頷く彼を見て…私はくすりと笑った。







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