髪を結ってもらう話
謝必安さんの長い髪が好きだ。謝必安さんの三つ編みが好きだ。そう考えながら綺麗に編まれたそれを見つめる。
「謝必安さんって、三つ編みうまいですよね。」
「ありがとうございます。まぁずっとやってますからね。」
「……そうだ、謝必安さん!私の髪を結ってもらえませんか?」
「別にいいですが……触ってよろしいのですか?」
「もちろんですよ!ありがとうございます!えっと、これでくくってください。」
そう言いながら髪ゴムを渡すと、謝必安さんは「では失礼します」と後ろに並び私の髪に触れる。すっと謝必安さんの長い指が、優しく頭を触り髪を通り抜ける。
……ただ三つ編みをやってもらいたかっただけなのだが、もしかして私は結構大胆なことを言ってしまったかもしれない。謝必安さんが後ろに立っていてよかった……。髪を触られてるだけなのに顔が赤い姿なんて、恥ずかしいから見られたくないし。と思っていると、
「ナマエさん、出来ましたよ。こっちを向いてください。」
と、謝必安さん。鏡がないので今の自分の姿を見ることができないのは残念だが、その代わり手で触って確認してみるとそれだけでも綺麗にできていることがわかる。そして謝必安さんの方を向くと、ふふと笑われた。
「おかしいですか?」
「いえ、とんでもない。ただ可愛いなと思いまして。」
謝必安さんのその言葉に、ぶわっと顔が熱くなる。謝必安さんは本当に口がうまい。いつもいつも、私が言われて嬉しいことを絶対に言ってくれるのだ。
「謝必安さんってほんとリップサービスがうまいですよね……!女子はそう言うので簡単に恋に落ちちゃうんですからね!好きになっちゃいますよ!?」
と、照れた拍子にいらないことをベラベラと喋る私は相当頭が悪いのだろう。やらかした……!という私の感情はたぶん思いっきり顔に出てる。そして、地面とにらめっこをしながら、いっそロケットチェアにくくってくれとゲーム中ではないのにも関わらず考えていると、謝必安さんとの距離が急に近くなった。ん?と思い顔を上げると、謝必安さんと目が合う。そして彼は、まっすぐ私を見つめながら口を開いた。
「私はナマエさんに好きになって欲しくて言っているのですが……気づいてなかったんですか?」
私がこんなことを言うのは貴方にだけですよ、と続ける謝必安さんに、心臓が高鳴りすぎて止まりかけた。