ミニリッパーさんとリッパーさん
「か、可愛い〜!!」
私の目の前には、まるで小さな人形のようになったリッパーさん"ミニリッパー"が立っている。その愛くるしい見た目に、思わず歓喜の声をあげる私。だって可愛すぎるんだもん。
「ミニリッパーさん、こっちに来てください!」
そう言うと、ミニリッパーさんは私のすぐそばに近寄ってきてくれた。これから一緒にゲームに行けるんだなぁと思うと、喜びが止まらない。
「これからよろしくお願いしますね。」
そう言いながらミニリッパーさんを抱きしめる。大人しく抱きしめられているミニリッパーさん、可愛いなぁ。と、思いながらぎゅうっと抱きしめることをやめない私。
「本物のリッパーさんには、こんなことする勇気ないんですけどね……」
そう言いながら、本物のリッパーさんに抱きつく私を想像して顔が少し熱くなる。ぜ、絶対無理!恥ずかしくて死んじゃう……!いや、そういうことする関係にはなりたいけど、無理!勇気がない!というか、勇気があったとしても、ハンターとサバイバーというお互いの立場を考えたら、脈なんてどう考えても……。そこまで考えて、気分が沈む。
「……私の気持ちは、どうしたらいいんでしょうか?リッパーさん。」
思わずミニリッパーさんにそう聞くと、ミニリッパーさんは私の顔をじっと見たまま動かない。どうしたのだろう?
「ミニリッパーさん?どうしたんですか?」
「……ほう、ミニリッパーですか。」
「え!?」
突然、背後から声が聞こえて反射的に振り向く。
「リ、リッパーさん!?」
そこには、本物のリッパーさんが立っていた。
ぜ、全然気づかなかった……。ミニリッパーさんに話しかけてたこと、聞かれてたらどうしよう。なんて焦りつつも、なるべく悟られないように振る舞う。
「驚かせてすみません、ナマエさん。」
「いや!大丈夫ですよ。何か用でもありましたか?」
「いえ、特には。ただ、貴方が小さい私を抱きしめているのが気になって声をかけました。」
その言葉に、少し焦る。私はミニリッパーさんを抱きしめている……それはリッパーさんを抱きしめているのとほぼ変わらないのでは!?そう考えて急いでミニリッパーさんを離し、何か言おうと口を開く。
「あっ……これは、可愛くてつい……!」
言い訳が思いつかなくて、つい素直に答えてしまった。あ、と余計なことを言ったのに気づいた頃には遅く、口を手で押さえるのも遅い。リッパーさんはそんな私を見て、くく、と笑う。
ミニリッパーさんはいつのまにか、どこかへと歩いて行ってしまった。
「そういう貴方の方が可愛いですよ。小さい私が羨ましいと思うくらいには、ね。」
「えっと、り、リッパーさん……?」
リッパーさんのその言葉に困惑する。紳士のリップサービス?それとも、これは……。
「ジャック、でいいですよ。」
「……ジャック、さん……」
そう言われた通りに名前を呼ぶ。すると、リ……ジャックさんは嬉しそうに私の頬を優しく指で撫でた。な、なにこの流れは……!ジャックさんの言動にドギマギして、きっと今の私は顔が林檎みたいに真っ赤なんだろう。
「……ナマエさん。小さい私にしていたこと……私にしていただけませんか?」
ミニリッパーさんにしていたこと、つまり抱きしめることだ。ってことは、抱きしめてってこと……?
「えっ!?」
「意地悪してすみません。ただ、どうしても小さい私が気に食わなくて。」
「そ、それって……」
つまり、嫉妬ってこと……なのだろうか?
「ここまできたら、もう隠せませんね。」
ジャックさんはそう言うと、片膝をついて跪いた。
「ナマエさん、好きです。私の気持ちに応えてはくれませんか?」
その言葉は、これは夢かと疑うほど幸せなもので。ずっとずっと、夢に見てきたことが現実になるだなんて。だんだんと溢れ出てくる涙で、ジャックさんがよく見えない。
「喜んで……!」
そう応えて、嬉し涙を隠すようにジャックさんにぎゅうっと抱きついた。
(盗み聞きしてしまったことは、秘密にしないとな。)