ジャックさんに油断する話



なぜこんなにも彼が愛おしいのだろう。
高身長の彼を見上げると首が痛くなるが、そんなことお構いなしにじっと見つめるとなにやら困った様子で「どうしたんだい?」とジャックさんは一言。まぁ、私が急にジャックさんの部屋に押しかけたのだから、この反応もそりゃそうだろう。

「ジャックさんに会いたくて、来ちゃいました!」
「……とりあえず、お茶でも飲むかい?」
「いいんですか!」

ジャックさんが部屋に上げてくれることが嬉しくて、喜びを隠しきれない。おいでと言われ部屋に足を踏み入れると、ジャックさんのいい匂いがする……。一人で興奮してニヤけている私に気づいてないだろうジャックさんは、お湯を沸かしてくれている。紅茶を入れてくれるのだろう。いきなり来たのになんて優しいんだ!好き!
適当に座っていいよ、と言われたので、目の前にあった椅子に座らせてもらう。そこから他愛もない話をしていると、ついに紅茶がカップに入れられ運ばれてきた。……?少し、嗅いだことのない匂いがする。いや、決してまずそうとかそういう匂いではないんだけど。

「ジャックさん、ありがとうございます。部屋にまで入れていただいて……いただきます。」

そう言いながら、机に置かれたカップを持ち紅茶を啜る。風味豊かで美味しいが……やはり珍しい味がする。どこかの国の珍しい紅茶……とかだろうか?と、考えていると、だんだんと頭が回らなくなってきた。それに、なんだか体に力が入りづらい。一体どうしたのだろう。と、必死になって頭を回転させていると、ずっと黙って私の飲んでいる姿を眺めていたジャックさんが話し始めた。

「男の部屋に気軽に入るものじゃないよ、ナマエ。」
「どういう、こと……?」

ジャックさんの言葉がよくわからずにそう聞き返すも、段々と力の入らなくなってくる体と、霞む視界から状況を理解し始める。
もしかして私、ジャックさんに薬を盛られた……?
そう気づいた頃にはすでに手遅れで、私は気を失ってしまった。最後に見えたジャックさんは、表情はわからないがニヤリと笑っているような気がした。







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