切り裂きジャック
目の前の彼女を切り裂いてしまったら──なんて、考えることがある。私に怯えて震える彼女はきっととても可愛いだろう。そして、私は彼女の喉を掻き切るのだ。
「ジャックさん、どうしたの?」
サバイバーなのにも関わらず、
「……少し考え事をね。」
そう答えると、何を考えていたのかを知らない彼女は悩み事があるのなら相談してくれと、笑顔で言ってきた。だから、堪らず私はこう言ってしまった。
「別れよう。」
唐突なその言葉に、彼女は言葉を失っているようで固まったまま動かない。口を開いたかと思えば、
「どうして……?私、何かした?」
と、涙ぐみながらこちらを見ている。
「私は殺人鬼だ。今すぐにでもナマエを殺すことだってできるんだよ。」
「……私、ジャックさんに殺されるなら本望だよ。」
そう言いながら彼女は、恐れる様子もなく私を抱きしめた。
「ジャックさんのことを愛してるから、だから……ジャックさんが望むのなら、私は構わない。」
むしろ本望だ、と私に笑いかける彼女に、私は刃を振るうことができなかった。謝りながらぎゅうっと彼女を抱きしめ返すと、嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。