あぁ、神様!



──この世界は、繰り返されている。

おそらくこの事を知っているのは私だけだろう。周りは皆記憶を消され、特定の時間軸に戻され何もなかったかの様に過ごしているのに、そんな中私だけ自覚してしまったせいで記憶が完璧に消されなくなってしまったのだ。まあ、全てを覚えているわけではないが。

「星が綺麗だな!」

パピルスがキラキラとした目で夜空を見上げている。そんなパピルスを微笑みながら見つめるサンズ。

「そうだね」

そして私はパピルスにそう返事をする。そう、ここは天井なんてない、地上なのだ。確かに星は綺麗だ。でも……私にとっては虚しくなるだけだった。だってどうせまたこの景色は天井に変わるし、そもそもこれが何回目かがわからないのだ。
はぁ、とため息をつきたくなった。ここからまた、いつリセットされるのかわからない恐怖に支配されながら、幸せそうに振る舞わなければならないのだから──



──と、内心ビクビクしながら過ごしていたのに、地上に出てから二年も経った。あんなに頻繁に戻されていたというのに、二年も経ったのだ。

「ニェーッヘッヘッヘ!ナマエ!俺様のスパゲッティを食べてみてくれ!」

そして、パピルスはスパゲッティの腕が上がり……今では喜んで食べられる味になっている。
コトリ、と机に置かれたスパゲッティからは、食欲をそそる香りが漂ってくる。一口食べてみると、二年前の味すら思い出せないほどの上達っぷりだ。

「パピルス、本当に料理上手になったね!」

と、褒めると嬉しそうに調子に乗るパピルスはすごく可愛い。
パピルスのスパゲッティを食べ終え、サンズの元へ行くと「よう」と笑顔で迎えてくれた。
サンズはというと、地上に出てからは人間とモンスターの関係がどう築けるかが不安だったのか知らないが、目の下にうっすらクマを作っていたことがあったものの、今ではすっかり元気な様子だ。人間とモンスターで良好な関係が、親善大使様のおかげで築けたからだろうか?

「ナマエ……あのさ」
「ん?なに?」
「ずっと怖くて、言えなかったことがあるんだ。ジョークじゃないぜ」
「ふふ、何が怖いの?」
「heh heh…俺、ナマエのことが、好きだ」

まさかサンズから告白されると思っていたなかった為、思わず目を見開く。そして、理解した瞬間、顔がまるでHotlandかと思うくらい熱くなった。

「ジョークじゃ」
「ないぜ」

思わず聞いてみようとすると、一瞬で遮られた。

「う、うぅ……!」

思わず、視界が歪んで、頬を暖かいものが伝う。

「おいおい、なんで泣くんだよ。そんなに嫌だったか?」
「違う!嬉しいの!私もサンズのことが好きで……ずっと言えなかったから……」

そう言って思いっきりハグをすると、サンズも抱きしめ返してくれた。まるで壊れ物を扱うように、そっと、優しく。
この時間がずっと続けばいいのに。そう思うほど、愛おしかった。サンズの顔がハッキリ見たい。そう思い、涙を止めるためにぎゅっと目を瞑る。

目を開けると、雪景色が視界いっぱいに広がった。

「……え?」

そんな、確か私はサンズと……サンズはどこ?周りをキョロキョロすると、「どうしたんだ?オイラはここだぜ」と後ろから声がした。

「サンズ!」

思わず抱きつくと、「そんなに積極的だったか?」と言われてしまった。

「だって……はは、可愛い雪だるまに見えたのよ」
「オイラはイカしたスケルトンだぜ?」

あはは。
誤魔化すように、笑う。
久しぶりすぎて、頭が追いつかなかった。──リセットだ。チクショウ、なんてタイミングでリセットするんだよ。あの幸せが、一瞬にして粉々にされた気分だ。もう目の前のサンズは、私に告白してくれたサンズではないのだ。
どれだけ幸せを祈っても、神様は助けてくれない。神様なんて存在しないのだ。それとも──この"リセット"の力を手に入れた者こそ、神様なのだろうか。

「そうだ、私アンダインのところに用があるんだった」
「そうか、わかった。じゃあまたな」
「うん」
「送ろうか?」
「大丈夫。またね」
「ああ」

嘘つきでごめん。本当は用なんてない。これ以上、ここにいてもつらいだけだった。少し歩いて後ろを振り返ると、サンズはもういなかった。

「好きになってくれて、嬉しかったよ」

思わず、そう言葉にした。でも、それはサンズに届くことはない。届かなくてもいい。
逃げるように去った。雪をザクザク踏みつけて、気持ちの鬱憤を晴らすように走った。

「……オレもだよ」

誰かが口にしたその言葉は、誰の耳にも届かないまま雪の様に溶けて消えた。


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診断メーカー:【お題】切ないシュチュエーション?ったー
Sans×夢主の切ないシチュエーション
『目を閉じて 君に 「好きになってくれて嬉しかったよ」 と言いました。』 

非公式翻訳→公式翻訳になっています。公式翻訳にアップデートされリセットされたものの、記憶が消えない二人のお話でした。







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