Don't know anything.
ぼふっ。
落ちた。雪の上に、まるで埋もれるように。全身は雪まみれになり、すごく寒い。というかここ、どこ?さっきまで私は……何してたんだっけ。えぇと……確か、仕事帰りで電車に乗ってたはず。どうも記憶がぼんやりとして、ハッキリと思い出せなかった。でも、確かに電車に乗っていた。なのになぜ私はSnowdinにいるのだろう。……いや、Snowdinってどこ?なぜその地名が出てきたのだろうか。だって、聞いたこともない。
とりあえず、起き上がって雪をはたく。
「よう。ナマエ、こんなところで何してるんだ?雪遊びか?」
気がつくと、目の前に見慣れた姿が立っていた。雪遊び、というのは私が全身雪まみれになっているからだろう。
「一人で雪遊びなんてしないよサンズ!」
そう自然と口から出た言葉に、違和感を覚える。
誰だ、この人。いや、人ではない。骸骨……が、動いて、喋ってる?そして、なんで私の名前を知っていて、どうして私も名前を知っているのか。なんで私は見慣れていると感じたのだろうか。
「え、え……?」
「ん?どうしたんだ?俺の顔に何かついてるか?」
いや、サンズはいつも通りだよ……と、口にしかけて、また意味がわからなくなる。なにこれ。知らないはずなのに、知っている?思考がごちゃごちゃして混ざり合って、気持ちが悪い。吐きそう。立っていられなくなってしゃがみこむと、ふわりとサンズに抱きしめられてを背中をさすられる。
それが、どうしようもなく落ち着いた。
「サンズ……」
「無理しなくていい、落ち着いてくれ」
サンズの低くて優しい声に、心が暖まるのを感じた。サンズの言う通り、落ち着いて考えてみる。……そうだ、まず私はSnowdinにサンズとパピルスと暮らしていて……今日は確かパピルスの作ったスパゲッティが食べたくなくてここまで逃げてきたんだった。
「……サンズ、ありがとう。だいぶ落ち着けたよ」
そう言いサンズの顔を見ると、なぜか嬉しそうな顔をしていた。その表情は、どこか怖い。今までサンズに恐怖を感じたことはなかったのに、……というか、そもそも、私は
「あー……まだ完全に忘れてないようだから、一度眠った方がいいな」
考えている途中だったというのに、そう言ったサンズの胸板に顔を押し付けられ、頭を優しく撫でられる。
「忘れてないって……?」
「ナマエは何も知らなくていいさ」
一体、どういうこと。まだ聞きたいことがあるというのに、意識が遠のいていく。瞼が閉じる。
「……やっと手に入れたんだからな」
その言葉の意味なんて考えている暇もなく、私は意識を手放すしかなかった。