貢ぎたい
私は魔物と戦っても勝てっこない、平凡なハイラル人だ。だから魔物の多いハテノ村の外へ行ったりなんて出来ない。
そんな私を見かねたのか、旅人であるというリンクは、この村では手に入らない食材をいつも持ってきてくれる。最初はもちろん悪いと断ったんだけど、あまりにもしつこかっ……いや、善意はありがたく受け取るべきものだと思うので、毎回ありがたく頂戴している。そして気がつけば、貰った食材で私が作った料理をリンクに振る舞うのが恒例になっていた。
……そういえば、前に食べ物以外も貰ったことがある。「絶対似合うと思ったから買ってきた」と言って彼が渡してきたのは、ゲルド族の民族衣装だった。
ゲルドの街に売ってるものらしいけど、ゲルドの街ってここから相当遠いはず。それなのに私の家を訪れた翌日には服を持ってきたものだから驚いた。
なに、リンクはワープでも出来るの?体力すごすぎでしょ……。
……あれ、ゲルドの街って男入れたっけ?確かにリンクって顔は結構かわいいし……?
なんてことを考えながら、今日も私の家に訪れているリンクのことを眺めていると、視線に気がついたのかにこりと微笑んできた。
「どうしたの?」
「いや、なんでも」
「……あ、そうだ。今日も渡したい物があるんだ」
リンクがそう言いながら懐から何かを取り出す。きっとまた食材だろう。今日は何をくれるのかな?期待しながら様子を見ていると、リンクが机の上に取り出したのは、眩しいくらいキラキラと輝いているものだった。ゴトリ。そんな音を立てた、私の家に似つかわしくない豪華なそれは、数えきれないくらいの鉱石の頭飾りと耳飾りだった。
「な、なにこれ?」
「アクセサリー。どれもナマエに似合うと思ったから、全部買ってきたんだ」
「い、いやこれ絶対高いでしょ!?い、いいの!?こんなにたくさん受け取れないよ!!」
「あ、最大まで強化してあるから安心してよ」
「どういうこと!?」
強化ってなんだよ。ハイラルで一番貴重な鉱石の、ダイヤモンドの頭飾りもあって思わず倒れそうだ。初めて本物見たよ。
「ち、ちなみにこれは一体どこで……?」
「ゲルドの街だよ」
やっぱりゲルドの街からハテノ村まで持ってきたらしい。私は先程気になっていたことを質問してみることにした。
「ねぇ、ゲルドの街って男の人入れたっけ?」
そう聞くと、リンクはピシリと固まる。
「……例外もいるんだよ……」
そう言って、気まずそうに目を逸らす。例外とは一体なんなんだろう?気になる……。
その後リンクに話を逸らされて、結局全部受け取ることになり毎日日替わりで身につけることを約束させられた。「毎日見に来るから」と言われ、リンクは各地を旅する旅人だから毎日は無理だろうと思っていたがリンクは本当に毎日来た。