私がリンクでリンクが私
※付き合ってます。
とんでもない事が起きた。
気持ちの良い朝日が窓から差し込み、小鳥がチュンチュンと鳴いている。いつもならなんて気持ちの良い朝だろう!と思うところだが、今日はそれどころではない。
「リンク、起きて!起きてってば!起きろぉ!!」
未だにスヤスヤと眠る体を勢いよく揺らしながら耳元で怒鳴る。普段ならこんなことはしないが、今は気にしている場合ではない。
「う〜ん……なに……ん?え?」
その甲斐あって、彼は眉間に皺を寄せながらゆっくりと目を開けた。そして、この"違和感"に気がついたらしい。
「……えっ、ドッペルゲンガー?魔物?」
いやこんな時に天然出さなくていいから。
「自分の体、見て」
「……え、女の子の体になってる!?」
「ほら鏡見て」
「……ナマエの体になってる?」
鏡を渡すと、リンクは今の状況を理解したようだ。
そう、私たちは中身が入れ替わってしまったのである。
原因は不明だ。ただ二人で寝ていただけなのに、なんでこんなことになっちゃったんだろう。変な薬でも飲んでしまったんだろうか。
「そう。もうわかったよね。なんか入れ替わってたんだけど、どうすればいい?英傑様」
「こういう時だけ英傑って呼ばないでくれる?」
と、言いつつも、リンクもどうすれば良いか真剣に考えてくれている様子だ。……本当に、どうすれば良いんだろう。
とりあえず不幸中の幸いは、今日は馬宿や宿屋ではなく、ハテノ村にあるリンクの家で寝泊まりしたことだ。
周りに人がいなくて助かった。
「もう一回寝て起きたら戻ってたりしないかな?」
「いや、それは……」
「だよね。ごめん、冗談」
「うーん。どうすればいいのか……。俺、とりあえずトイレ行って来るね」
「うん、わかっ……」
リンクの言葉に「わかった」と返事しそうになったが、事の重大さに気がついた私は慌てて引き止めた。
「待て待て待て!」
「……え、なに……?」
「え、なに?じゃないよ!トイレ行ったら、その……見えちゃうじゃん!」
と、私が顔を熱くさせながら言うと、
「え、なにが?」
と、爽やかスマイルをするリンク。ふざけんな。コイツ、どう考えても確信犯である。全てを理解した上でとぼけているのである、この英傑は。
「今トイレ行ったら全裸でハイラル一周してやる!!」
「ごめんなさい」
リンクがトイレに行くのは阻止できたが、本当にどうしようか。
いくらリンクの体になったとはいえ、私には体術や剣術は一切わからない。リンクにその知識があっても、私の体で戦闘は無理だ。きっと私の体がついていけずに怪我しそう。鍛えてなくてごめんなさい……。
とりあえず今日は、普段通り旅をすることはできないな。
「はぁ……なんでこんなことになったんだろう。リンク、心当たりある?」
「心当たりなんてな……いよ」
「なに今の間。え、あるの!?」
「うぇ?ないない」
明らかに怪しい。怪しすぎる。リンクを睨み付けると、焦った表情をしている。あれは言い訳を考えている顔だ。
「白状しなさい!」
と、リンクを鬼の形相で問い詰めると、とうとう打ち明けた。
「昨日晩御飯にマモノショップで貰ったエキスを混ぜました……」
「絶対それじゃん!!」
マモノショップってあれか、あの怪しい店か……!まだ通ってたのか……。あれ英傑が通っていい店じゃないでしょ。
「なんのエキス混ぜたの?」
「いや……なんか、マモノエキス改良しようとしたら違うものが出来たからあげるって。二人で使うといいって言われたからてっきり……ね。あはは。まさかこんなことになるとは」
「……やっぱり全裸で走り回ってきていい?」
「勘弁してください」
殴りたい……。相手は私の体だから我慢するけど。てっきりって何考えてたんだお前は!
失敗作とはいえ、マモノエキス・改良版の効果は絶大で、この日一日ずっと元に戻らなくてリンクはもっと私に怒られる羽目になった。
……まぁでも、久々にゆっくり過ごせたからいいか。
体は元に戻ったが、私に怒られてシュンとした様子のリンクの頭を撫でて、「変なエキスなんて頼らなくたっていいんだよ」と言うとベッドに連れて行かれた。今日は寝れなさそうだ。