デジャヴ
ED後激しく捏造です
半端なところで終わってますが続きます〜〜

「その時左右田がさぁ、」

日向は狛枝の方を向いた。
対する彼は遠く一点を見つめている。
さっきからずっとこんな調子だ。
返事も、「うー」とか「うん」とか生返事ばかりで、全く話を聞いてない様子と伺える。
これは俺が聞くしかないのか。
日向は観念して問いかけた。

「…狛枝?どうした?」

「日向くん、これ何週目?」

その言葉を待ちわびていたかのように、すぐさま質問が返ってきた。

「…何の事を言っているんだ?」

何の事かは日向の方がよく分かっている。しかし、そう言いざるを得なかった。
口ではとぼけた事を言っているが、表情がそれを物語っている。

「この世界の事だよ。」
そういう非現実じみた事を言う狛枝は全くの無表情で、冗談のつもりで言っていないことがわかる。
いつもよりも心なしか強い口調で聞く狛枝の質問にはあえて答えず、日向はこの世界の事を認めた。

「…思い出してきてるのか」

「何となくね。この会話ももしかしたらしたことがあるのかもしれないね。」

とりあえず座ろうか、と狛枝が促す。
立ち話ではすまなくなってきた。
二人は公園の隅にあるベンチに腰かけた。

そよ風がふいて狛枝の髪をなびかせる。その度にどこを捉えているのか分からない目が見え隠れする。

やっぱり綺麗だ。絵になるとはこんな事を言うのか。
ま、俺には絵の才能なんかないから描けないけどな。
日向は重大な話にも関わらずそんな事を考えていたが、狛枝の声ではっと我に帰る。

「最近よくデジャヴを感じるんだ。あれ?こんなこと前にもあったような、ってね。最初はただの思い違いかと思ってたけど余りにも多すぎるんだ。って言ってる今まさにデジャヴ感じてるんだけど」

風が少し強くなってきた。
日向の少し硬めの髪がなびく。
吹いたり止んだり、随分忙しそうな風である。
日向は相槌を打たない。ただじっと狛枝の話を深刻な表情で聞いている。

「…ねぇ日向くん、」

「ボクはいつまでここに居ればいい?」

狛枝は日向を見ようとしない。
見るのが怖い。

「いつまでって…そんなの決まってるだろ。早くさ、帰ってこいよ。こっちに。」

日向が微笑む。
それはかつて狛枝に超高校の癒し系と言われても過言ではない程に相手を安心させる。
相手が例え自分を見ていなかったとしても笑顔になることで声を柔らかくさせる。
しかし狛枝はその声色が何時もよりも弱干かたいのを聞き逃さなかった。

「ほんとにそう思ってる?」

「え?」

「ほんとはさ、いつまでもここに閉じ込めておきたいんじゃないの?」

日向の表情が険しくなった。
もう聞きたくないと逃げてしまいたい。
これから続く言葉を聞きたくない。
その気持ちを読み取ったか否か、狛枝は言葉を続ける。

「だってさ考えてみてよ、ボクが仮に目覚めたとしても君の事を忘れてる可能性は大きいでしょ。それに絶望した状態なんだ。ここにいるボクより遥かに危険だよね、」

早口になりながらも狛枝は笑みを浮かべ、やっと日向を見た。
この笑みを何度恨み、恐れただろうか。
さすがに絶望がぐちゃぐちゃに混ざった目にこそなっていないが、日向はコロシアイ生活のころを思い出した。
いや、もう思いだすのは極力避けようと誓ったのだ。
日向は脳内からたった今思い出した記憶を振り払う。

「…もう…そこまで思い出してるのか、狛枝」

そこまで自ら思い出してきているということは目覚める気になったか、…いや、でも、

「怖いんでしょ?ボクが目覚めるのが」

狛枝の整った顔が歪む。
こんなこと本当は言いたくないのだ。ましてや日向に。
けれど、それに逆らうかの様に言葉は出てくる。

「…違う」

今度は日向が狛枝から目をそらした
いくら本心だったとしても、その心の奥底を見透かされそうになったから。

「嘘だ。君はボクをこの極めて平和な世界に閉じ込めておきたい、いつまでもね」

ああ、もう、この口ったら。
一度始まると中々踏ん切りのつかなくなるこの口が嫌いだ。
狛枝はこれのせいで幾度となく人を傷つけてきた。
と、ふいに既視感が狛枝を襲う。
ボクは前にも確かにこの場所で、この台詞で、この角度から、キミの傷ついた顔を見た。そうだ、その後日向くんは、

違うんだ、って言うんだ。

継ぎ接ぎだらけの記憶が少しずつ埋まっていく。
続き


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