ゆめ だったら よかった (ほんとうに?)
※日向くん女体化注意

狛枝が好きだった。
前までは友達として好きなだけかと、そう思ってた。
でも最近気付いたんだ。
他の男に対してはない、感情。
吐き気がしてきた。自分自身に。
まさかこの自分が異端者なんて思いもしなかったんだ。
この気持ちを消したいとも思った。無理なんだ。怖いんだ。
狛枝という存在を否定するような気がして。
「俺が女だったらなあ」
思わず呟いていた。
自分の声がコテージ内に響いたところで、やっと自分は何を言っているのだ、とさっきまで仰向けに横たわっていたベッドから飛び起きる。
俺は頭までどうかしたのか?
でも、
俺かあいつが女だったら。
そうなるだけでこの歪んだ恋は、気持ちは、極めてごく一般的な現象になる。
狛枝からも恋愛対象として見られるのだろうか。
…なんだかここまで本気に考えてしまって馬鹿みたいだ。
と、立ち上がったころ丁度アナウンスが鳴った。
もうこんな時間か。
明日も修学旅行は続く。早く寝よう。
きちんと締めていたネクタイを緩め、さっきと同じ体勢になった。
ほどよい眠気が襲ってくる。
よかった、ちゃんと寝れそうだ。


何かが、違う。
体が重いとか、熱いとか、そんなレベルじゃない。
何かが根本的に違う。
この違和感。今までに味わったことのない違和感。
こうして当たり前の事を分析せざるを得ない。
とりあえず俺は今、ベッドの上だよな。
それで、寝ているんだよな。
うん、ちゃんと布団もかぶってる。
起きてみる、か。
起き上がる。で、膨らみのないはずの部分が見える。
思考停止。
「…えっ?」
またも違和感。
声がおかしい。普段から声変わりしているにも関わらず、中性的な声が、何トーンか高い気がする。
風邪か?
額に手を当ててみる。正常だ。全くの平熱。
これは 何かの 夢だろうか?
夢であってほしい。
しかし、この胸は、声は、違和感はなんだ。
しょうがないので、ベッドから起き上がる。
下を向くと、いつもとは全く違う違和感が分かる。
「鏡をとりあえず…見に行くか」
うわ、やっぱり高い。
まだアナウンス前の、静まりかえったコテージをそっと、出ていった。
鏡のあるライブハウスまで向かう。


「は?」
鏡に写るのは、肩ぐらいまでのショートカット、頭のてっぺんにあるアンテナ、馴染みすぎているあのカッターシャツにネクタイ。そして少し短めのスカート。
「嘘だろ?」
俺はこんな女は知らない。
べただけど、頬をつねってみる。力は加減してるけど、痛い。
現実だ。これは、まさしく俺だ。
顔が第一似ている。というか、同じだ。
俺が女になったらこんななのか、と思わず冷静に感じてしまった。
「どうしよう」
それのみだった。どうする。どうする。
とりあえず、この状況は結構やばい。
一旦帰ってから考えるか。
と、思った時。
はっじめちゃーんっ!!ここっすかぁ?」
突然、ライブハウスの扉が開かれたかと思うと、見覚えのあるシルエットがあった。
「うっきゃー!?!?だだだだれっすか!?!?あっ創ちゃんっすねーなーんだってうぎゃあああああ!?!?」
そして何やら絶叫している。
俺だって絶叫したい。
…一番会いたくない人に出会ってしまった。どうするべきか。
まだ十分に思考回路が回らない頭で考える。
日向創ではないふりをするか、日向創だというか。
嘘をつくのはあまり得意じゃない。
「…俺だよ、澪田。」
すると澪田はしきりに顔をぱちぱちさせ、
「ああ、創ちゃんっすかーなーんだ!!!!唯吹の心ドッキュンバッキュンだったっすよぉ!!」
俺だってドッキュンバッキュンだったよ。

「……ってええ゛えぇ!?ほんとに創ちゃんなのおぉお゛ぉ!?」
「俺じゃなかったら一体誰なんだよ…」

この澪田の反応がいわゆるノリツッコミ?というやつなのか?
なんて考えられるってことは、俺の頭はいたって冷静ということだ。

「創ちゃんてそんな趣味があったんすね…でもめちゃめちゃ似合ってるっすよ!!!!」

「そっそれは違うぞ!!俺にはこんな趣味なんてない!!」
かくかくしかじかな事を説明した。
「うーん…まあよく分からないけど創ちゃんは濡れ濡れの百合世界にご招待されたってことっすね!!百合ワールドへようこそ!!!!」
百合って…なんだ?お花?
「創ちゃん…まさか百合知らないわけじゃないよね…!!?お花の百合って考えてるんじゃないよね…!!」
「ココロンパすんなよ!!…で、百合ってどういうことなんだ」
「薔薇の反対っす!!」
「は???薔薇??」
「創ちゃんほんとにマジメっすね。はじめっ!!て感じっす。」
褒めてるのかそれ…
「もっちろん、褒めてるっす!!!」
「なんでお前ココロンパできるんだって!まぁいいや、とりあえず朝ごはんは食べにいかないとまずいよな。」
「あっそうそう!!ごはんですよって呼びに創ちゃん探してたんす!!というわけでランナウェイっすう!!」
「えっちょま…ッ!!?」
心の準備できてないんだけどお!!???


突然、見慣れない姿が目に写った。
澪田さんが連れてきた女の子。
いや、一人は知っている。澪田さんだ。でももう一人、待ち望んでいた人とはかけ離れた人が。
僕が記憶喪失になっていないとしたら、これはどういうこと?
「…ねぇみ「はーーーっ!?!?あんた誰!?!?!?」
僕が言おうとしたところ、西園寺さんが立ち上がる。
そして彼女に指を指して、皆の気持ちを代弁してくれた。
皆の不審げな目付きに、その人はハッとした顔つきになると、少し顔を俯かせた。
七海さんが眠たげな目をちょっと開いた。
七海さんは何かが分かったのかな?
聞いてみたいところだけど…皆のこの反応はどういう事だろう?
考えられる事は二つ。
一つは、新しく来た、知らない人。
でもそんな事があるわけがない、はず。
第一どうやってここまで来たんだ。
もう一つは、…この女の子が、いまここにいない人…日向クンってこと。
これだって、そんな事があるはずないんだ。いや、でも七海さんが何かしら反応したんだ。辻褄が合う。
もしかしたら、今まで僕が日向クンは男と勝手に認識していただけかもしれないけど、皆の反応はどうやらそういう事じゃなさそうだ。
と、悶々と思考していると、不意に女の子が口を開いた。
「俺は…「この女の子は創ちゃんなんすよぉーーっ!!!!!!」
皆が、固まった。                                                                        

▼to be continued?



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