このゆめを さまさない
これの続きです。
日向くん女体化注意!

「この女の子は創ちゃんなんすよぉーーっ!!!!!!」
皆が固まった。
いや、本当になったわけじゃなくて、あくまで例えだ。
なんて誰もが分かることを思える程に俺は余裕じゃなかった。
固まりたいのは俺の方だ。
自分自身で言うならまだしも、まさか他人によって正体を明かされるなんて。
穴があれば入りたい。もう一生埋まっていたい。
修学旅行の中で一番かとおもわれる衝撃の中、澪田だけがにこにこ笑っている。
いや、…七海は固まっているというよりも相変わらずぼけっとしている。
そこに驚いている様子は見られない。
まるでこの状況を知っていたみたいに。
…逃げられない!!
目を背けたいのだが下を見ると本来そこまでないはずの膨らみが見えるので、どうしようもない。
この間3秒。
「…ま、」
俺にとっては3分に思えた沈黙を、
「マジかよ!!!!???」
左右田が打ち破った。
この状況に実にふさわしい突っ込みは、おそらく皆が今一番言いたい事だろう。というか、それ以外に浮かんでこないだろう。
左右田の言葉で喋る余裕が出来るほどの驚きになったのか、口々に騒ぎ始めた。
「どういうこと!?」
「はあーーーーーーっっ!!???」
「て、てめえ意味がわかんねーよ!!!!!」
生憎俺は澪田みたいに耳はよくないから、ここまでしか聞き取れない。
「マジっす!!ね、創ちゃん!」
またしても澪田が答える。
同意をもとめ、にこにこしながら聞いてくる様子を見ていると、謎の違和感を感じた
ああ、身長も縮んだのだろう、普段上目遣いで見てくる澪田と同じ目線になっている。
「…あ、ああ」
今といいさっきといい、どうやら俺は動揺していると目の前を冷静に分析する癖があるようだ。
そして問いかけられていた事を思い出すと、慌てて肯定をした。
「なーんか朝起きたら、急に女の子になってたみたいっす。鏡を見ようとライブハウスに行ったところ唯吹と運命の出会い!!創ちゃんミーツ唯吹っす!!」
説明を澪田がしてくれる。
正直今説明するのにはまだこの緊張や不安が解けていなくて、俺だったら黙りこくってしまうところだった。
…ま、こいつに感謝だな。
説明してくれている間、席を見回してみる。
狛枝と目が合う。いや、ねっとりとした視線はさっきから感じていたんだ。
最も目を合わせたくないのだが、なんというか、怖いもの見たさのような。
狛枝は笑っていた。
音速で目をそらす。
そうだ。元々は俺が狛枝を好きになってしまった事から始まったんだ。
確かに俺は昨夜、ふと思った。
この異端な恋愛を普通の恋愛に変えたいと。
偶然でなければ、これが俺の望んだことなんだ。
それにこの島はなんでもありなんだ。非現実的なもの…例えばウサミとか、誰もいないのに綺麗に管理されている島自体とか…が転がっている。
きっとこれもその一種なんだろう。
もしかしたらこれは俺自身が作り出した夢なのかもしれない。
それならそれで、好き勝手やったって少しくらいはいいんじゃないか?
型から外れてもいいんじゃないか?
…こうなったら楽しんでやろうじゃないか!!
「えーと、俺自身がよくわからないんだけど、とりあえずよろしくな?どうせウサミかなんかがやったんだ、すぐ戻るさ」
気持ちが落ち着いた。
やっと自分から、自分の言葉で言えた。

「えっなんでわかったんでちゅか!?日向くんエスパー!?」
突然、独特の声がどこからか聞こえてきた。
恐らくこんな状況にしたてあげた本人の。
「ウサミ!!お前いつからいたんだよ!!」
終里がウサミを睨み付けた。
「さいしょからいまちたよ!?あちしの存在感薄っ!!」
今更かよ、と心の中でツッコミをいれる。
うん、大丈夫だ。
多分。
その前にウサミに色々とつっこみたい。

「なあウサミ、これはお前がやったということで間違いないな?」
「はい、そうでちゅ!生徒の願いは出来るだけ叶えてあげたいでちゅからね!」
「なんでこの事を知っているんだ?」
「先生はわかっちゃうんでちゅ!恋っていいよね…まさか日向くんがそっちだとはおもいまちぇんでちた…まあ、性別なんて関係ないんでちゅよね!!でも日向くんが願っていたので叶えてあげまちた!」
早口でまくしたてる。
先生はわかっちゃうなんて下手な誤魔化し方をするウサミが、誇らしげに胸を張った。
「ごまかすなよ…俺はそんな事を知りたかったんじゃない」
「え、えっとだから…先生だから、としか言い様がないんでちゅけど…」
「…まあ、冗談とは言え叶えてくれてありがとな。」
「日向くんからお礼の言葉がでてくるなんて…先生感激でちゅ!」
もうこれ以上言っても無駄だと、皮肉で言ったつもりだったのだが、真に受けたのだろうウサミは目の辺りのふぇるとぢを濡らした。
というか礼を言っただけで泣くとは、そこまで俺は問題視されていたのか?
結局主犯が分かっただけで、後は誤魔化されて終わってしまった。
このおかしな事もこれまでの経験上一日二日で終わるだろう。そうであってほしい。
この島に来てからなんだか変だ。
こんな事も驚きつつも信じて受け入れてしまっている俺がいる。
…まあいいか。それより脚がすーすーする。
疑問は少しずつ消え、俺の中はスカートに慣れないという違和感だけが残った。

▽to be continued・・・?




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