「「日向くん」」
「「一緒に出掛けない?」」
かぎかっこをうち間違えたのではない。
二人が同時に喋っているのだ。
日向は狼狽える。
「どっどうしたんだよ二人とも…」
「ん?いつも日向クンはこんなボクの事を誘ってくれるからね、恐れ多いけどたまにはボクから誘おうと思って!」
「…それで、たまたま私も日向くんを誘おうと思ってたんだよね」
「全くなんて不幸なんだ!!よりにもよって七海さんと被っちゃうなんてね…なんで今日なの?」
「…狛枝くんこそ、なんで今日なのかな?」
今、日向は同じ時間同じ場所で同時に二人から誘いを受けている。
同時に二人とは普通であればその二人は仲良しにも程がある、ということになるのだが、狛枝と七海はそうではない。真逆だ。
コテージから出た瞬間これだ。
誰を誘おうかと外に出ると(自称)通りすがりの二人がこちらへ来た。
待ち伏せでもしていたのではないかと疑うレベルだ。
…もし本当にそうだとしたら。
日向は考えるのをやめた。これ以上考えると怖くなる気がする。うん、やめだ。
二人の間に火花が散っている。
鈍感だと言われる(本人自覚なし)日向でも分かることだった。
「ねえ日向くん、」
「キミはどっちの誘いに乗る?」
仲が悪いにしてはピッタリな息で、二人は日向に詰め寄る。二人ともいかんせん人付き合いに慣れていないので、興奮ぎみの吐息がかかるほど日向に近い。
「あぁ〜、え、えっと…」
無意識のうちに後ずさろうと試みるが、すぐ後ろはコテージのドアだ。
なんとか穏便に済ませられる方法はないか。昨日は狛枝と遊んだし、今日は七…だめだ、昨日は七海とも遊んだんだった。
二人の誘いに乗らず他の人と遊ぶか?いや、折角誘ってくれたんだ。でも…
お人好しという性格が災いして、上手く決断出来ない。
あっ、
ひらめいた!!
「あ、じゃあ、3人で遊ぶのはどうだ?それならどっちの誘いにも乗れるし、楽しいだろ」
ふいにぱあっと顔を明るくさせ、どうだ名案だろ!と得意げになる。
対する二人は複雑な気持ちで渦巻いていた。
とても嬉しい、嬉しいけど素直に喜べないし、なんか勝負に負けた感がある。しかもコイツと一緒だなんて!!
残念なことに、二人の仲が悪い原因が日向自身であることは本人は全く知らない。
すっかりご機嫌になった日向は、とても楽しそうで、にこにこと笑っている。
その様子を見、二人は互いに顔を見合わせる。
(ま、日向クンもよろこんでるみたいだし…)
(……この勝負は引き分け、かな…?)
* *
UNさんリクエストで狛→日←七でした!!短いうえにどちらかというとただ狛枝VS七海みたいになっていて申し訳ないです・・・!!
UNさんのみお持ち帰り可能です!リクエストありがとうございました!