「ダイゴさん」
名前を呼ぶのは好き。
「ルビーくん」
と、名前を呼ばれるのはもっと好きだけど、でもダイゴさんはあまり僕の名前を呼んでくれないんだ。
「君」
大抵こう呼ぶんだ。
それに対抗しようとするけど、
「あなた」
って呼ぶのは、ちょっとどころかかなり気がひけるから、名前を呼ぶしかないんだ。
「ダイゴくん」
と、四天王の人たちは呼ぶ。僕とダイゴさんの年がもう少し近ければ、そんな風に呼べるんだけど。
「ダイゴ」
そうやって、呼び捨てにするのは今のところ師匠とダイゴさんのお父さんくらい。
出来ることならそんな風に呼んでみたいけれど、無理にもほどがある。
さん付けで呼んでると、僕とダイゴさんの距離がなんだかすごく遠いような気がして、時々むなしくなる。
背は高くなっても、年齢を重ねても、この距離はいつまでもきっと変わらないんだと思う。
なんて、そんなことを考えていることは、ダイゴさんはきっと知るはずがないんだ。
こんな風に意識して、むなしくなって、勝手に悲しくなって、涙が出てくるのは僕だけなんだ。
「これはね、ルビーの原石なんだよ」
なんて、前話してくれた時、すごくどきどきしたことなんて、知らないに決まってるよね。
「ミクリ」
師匠のこと呼び捨てにしてよぶのを羨ましく思うことなんて、知るよしもないよね。
そんな下らないことに着目してる自分を情けなく思うけど。
でもしょうがないんだ。
「ルビーくん」
その名前を呼ばれるだけで、こんなこと忘れちゃうほど嬉しくなるくらい単純なんだ。
僕ってつくづくばかなんだって思う。
けど、こんな風にさせたダイゴさんは、もっときっとばかだよね。勝手にそう思っとく。
ダイゴさんのばーか。
心の中でそう呟いたことを、ダイゴさんは知るよしもない。