終焉
俺、お前にずっと言いたかったんだけどさ、
実は案外お前のこと、憎んでなかったよ。
目覚めてから気付いた。
お前が死んだ後は俺らが絶望の残党だとか俺がカムクライズルだとか、あそこがゲームの世界だとかさ、色々一気に突きつけられすぎてさ、正直お前を思い出す暇さえなかったんだけど、全て終わってからそう思ったんだ。
いや、まだ何も終わってないか。お前にとっちゃあこれからがはじまりだな。
あ、訂正させてくれ。ちがった、もうしんだ仲間は目覚めないってこと聞いたとき、真っ先にお前の顔がうかんだよ。
なんでこいつの顔なんかが、ってすぐかき消したけどな。
全く、素直じゃないよなあ。
なんとなく狛枝の事を思い浮かべた事を忘れたくて、他の奴らの事を思いだした。
七海とか、田中とか、十神とか。コロシアイ生活で死んでいった皆のこと。
でも狛枝が一番インパクトあったっていうか、心に深く残ってたよ、やっぱ。

忘れようとしても忘れられなかった。
涙がな、出てくるんだ。
もう出てこない筈の涙が。
それは段々お前が眠っている姿を見て流れるから、お前を思い出すだけで流れるようになって、なんか1日一回くらいは泣いていた気がするな。
なんだ、涙が出るほど俺はお前の死を悲しんでいるじゃないか。
実はそんなに俺が思うほど憎たらしくなかったんじゃないか。
目覚める前の俺は自分の気持ちにまで嘘をついていたんだと思うよ。
それで、お前が起きたらまず一発ぶんなぐって、そのあとおはようって言って、その、あと…って、考えてたんだけどな、ちょっと無理になっちゃった。
俺もうそろそろ眠くなってきたんだよ。
寝れば治るとかそんな問題じゃなくて、あ、これくるな、って自分で案外わかるもんなんだよ。
底の見えない深い海に少しずつ沈められてくるような。
そんな夢をもう何回も見た。
それは夢なんかじゃなくて、幻覚なのかもしれない。
そろそろ俺の中では終わりが近づいてきている。
俺は終わり、お前は始まり。
なんか皮肉なもんだな。

生と死は繰り返す。それは分かっているんだけど、よりによってこんな形で巡るなんて。
気がついたら1日の半分寝るようになってた。
どこの赤ん坊だよってな。
それでもまだ眠くて眠くて、体が重くて。
うまく動けない。頭もうまく働かない。
俺自身を犠牲にしたあの人工の才能でしか俺は未来機関に貢献できないっていうのに、俺はどんどん駄目になっていた。
もう、俺このまま一生寝てる。
眠り姫じゃないけどさ。
わかった、もしお前が起きたら、俺の事起こしてくれよ。お前の幸運なら、ひょっとしたらいけるかもしれないぞ。
はは、王子の目覚めのキスで なんてそんな気持ち悪い事言ってられないな。
あれ、その前に世間知らずなお前は眠り姫の話、知ってるのかな。
100年の眠りにつくっていう呪いをかけられた姫が、王子様の接吻で目覚めて、はい、めでたし。って話。
まあ所詮おとぎ話はおとぎ話。
100年の眠りにつくなんてことはないけど目覚めるなんてこともない。
おとぎ話なんてそのどれもが虚構に過ぎなくて、ひどく現実離れしたものばっかだ。
でも最後くらい夢見させてくれよな。
なんか、夢を見ながら眠るって、素敵だな。
じゃあもう楽になっちゃうかな。

あーあ、お前ともう一度、このせかいで、あいたかった。

ありがとう。


狛枝、俺はたしかに好きだった。



今更気づいてどうすんだよってな。


prev next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -