それぞれの最終選別3
「なまえちゃん、おかえり!」
「休めたー?」

 なまえが水柱邸の玄関を抜けると、土間で食事の支度をしている隠が二人、明るい調子で出迎えてくれた。

「おかげ様で、気分転換になりました!」

 それなら良かった〜と女同士で会話が弾む。各処理に慣れている隠達は手際も良い。磨き上げられた廊下、いつもと変わらぬ台所の様子に、なまえの留守中も滞りなく屋敷の中が回っていたことが見て取れる。

「育ての親御さんのところへ行っていたんだっけ?」
「ええ、まあ」
「親御さん、元気だった?」

 朝食の残りをこじんまりと盛り付けた小皿を差し出しながら、隠が何の気なく問いかける。その場に義勇がいる訳ではないのに妙な冷や汗をかきながら、なまえは「変わりなく元気でした!」と明るく答えてみせた。

「冨岡様は忙しいみたいで、まだお昼前なのにもう出たのよ」
「明け方にお戻りになったと思ったらすぐに、ねえ」
「疲れてるのかいつも以上に言葉少なだったわよね、朝も昼も食べるのか食べないのか、はっきりして欲しいって」
「こら! 言い方考えなさいよっ」

 軽口は、水柱にそれぞれ慣れてきた彼女たちなりの愛嬌だ。くすくすと笑い合う二人の隠の前。義勇が心穏やかに過ごせているか想い馳せながら、なまえも曖昧に微笑んだのだった。

それぞれの最終選別3

PREVTOPNEXT
- ナノ -