scene00-0x 旅立ち禁止!
2012/02/01 20:11

父が消息を断ったという報せをうけた時の一場面。

「ダメよ、勝舞。あなたはこのままここにいなさい」
「なんでだよ!」
自分が父を探しに行くことに賛成してくれると思っていた母に、それをあっさりと断られ、勝舞は勢いよく噛み付いた。この決意を無為にするのかと、勝舞は母の非情さに怒りを感じずにはいられなかった。
そんな勝舞の心の内が読めたのか、舞は厳しい表情のまま息を吐いた。
「勝舞の気持ちはよーくわかってるわ。でもあんたはまだ『見習い』よ? それが取れるまでは、外に出すわけにはいかないの」
「見習いったって、ルピアや青銅の鎧もいるし、なんとかなるって!」
あまりに楽観的な勝舞の考えに、舞は思わず天を仰いだ。勝舞は世界を知らない。まだ彼には早いと村のまわりでばかり修行をさせていた弊害が、まさかこんな形で顕れるなんて予想外だったなどと、自らの落ち度を後悔してももう遅い。
「だーめーでーすー! あんたはまだ子供なの! ただでさえ危険なのに、それも見習いのまま旅にでるなんて許しません!」
「かーちゃんの分からず屋!」
いてもたってもいられない勝舞の気持ちは、舞にも痛いほど理解できた。だがせめて危機を脱する強い力が身につくまでは、勝舞を旅に出させるわけにはいかなかった。その最低限の条件が、召喚獣の中でも特別な力を持つ契約獣の召喚だ。それこそが見習いから脱する条件でもあり、勝舞はまだそこまで至っていない。
その後、いくら言っても聞く耳を持たず、ただ旅をさせろと何時までも騒ぐ勝舞に、舞は最終手段に出た。
「そこまですぐに旅に出たいって言うなら、かーちゃんを倒してから行きなさい!」
「っ! 望むところだ!」
舞の言葉に若干怯んだ勝舞だったが、それを吹き飛ばすように自ら発破をかけた。見習いの勝舞と違い、召喚士である母に勝舞が勝てたことは一度もない。が、勝舞はここで退くわけにいかなかった。ここで退いてしまえば、父を自分の手で見つけたいという想いが本当に嘘になってしまうと、勝舞は拳を強く握り締めた。

この後、勝舞は見事な玉砕っぷりを披露し、一層修行に明け暮れる毎日を送ります。



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