君と迎える真夜中0時

部活を終えて疲れた体を引きずって帰宅した。

机に並べられた飯を掻き込んで手を合わせる。そのまま汗でべたついた体を洗い流すために風呂に入った。


体も温まって腹も満たされて、このまま寝るかな…と階段を登る。「洗濯物出しなさいよー」なんて下から呼びかける母ちゃんの声に生返事を返しながら自室の扉を開けた瞬間、驚きのあまり眠気なんて吹っ飛んだ。

何も変わらない俺の部屋のベッドの上に横たわる幼馴染み、兼彼女であるなまえが寝息を立てて転がっている。
窓が空いているあたりからして、また勝手に入ったのだろう。


「なんつーカッコして寝てんだよ…」


11月とはいえもう12月も近い。布団もかけずに俺の学校とは違う制服を纏い、短すぎず長すぎないスカートは太ももギリギリの位置まで捲れ上がっている。胸元のリボンは寝苦しかったらしく乱雑に外されている。
そんな姿で眠る彼女は普段の様子から考えられないくらいの色気を醸し出していて、思わず息を飲んだ。


さすがにやばいと思った俺はベッドにゆっくりと近づいてなまえの体を小さく揺らした。


かがんでなまえを起こせば、まだ乾ききっていない自分の髪から雫が落ちる。それがなまえの首元にあたったらしく、くぐもった声を出しながらゆっくりと目が開けられる。


「ん…、あれ、かずなり…」


「おはよ。なんつー格好で寝てんのお前」


苦笑いする俺をボーッとした目つきで眺めて「部活お疲れー…」なんて呟く彼女。
相変わらずのマイペースは健在らしい。


「で?何かあった?」


俺の問いに「特に…」と返す彼女はやはりいつも通りだ。少し安心した。


時計を見ればもうすぐ日付が変わろうとする時間。ああ、もうこんな時間なのか。


「なまえ、もう11時回ってるけどいいの?帰らなくて。」


「明日学校だろ?」と髪を拭きながら問えば「今日はまだいいの」と頑なに帰ろうとはしなかった。


「ねえ和成」


「んー?」


「ちょっとこっち来て」


やっぱり今日のなまえの様子は少し変だと思いながら近寄った。

ぽんぽんとなまえの腰掛ける横を叩かれた。ここに座れってことか。


「普段は、さ。学校違うし、あんまりその…こ…恋人っぽいことできない…けどさ。」


俺が腰掛けると下をむいてもじもじと呟くなまえ。急にどうしたんだと思ったけどその姿が可愛くて「うん」と頷いた。


「か、和成は、も、ももモテるし、秀徳、で可愛い女の子に言い寄られてたら、わ、私勝てる自信ない」


たぶん俯くなまえの今の顔は真っ赤で、涙目で、すごく可愛いんだろうなあなんて想像しながら頷き続ける。


「で、でもね、やっぱり私は和成がすきだから、一番に言いたくて」


「一番に言いたい」の意味を理解できない俺は「何を?」と首をかしげる。


なまえがバッと真っ赤な顔を上げた瞬間、かちり、と時計の針が動く音がした。


「誕生日おめでとう、和成。生まれてきてくれてありがとう」


ふにゃりと笑う彼女の顔を見て、自分が誕生日だということを思い出すと同時に、「ああ、やっぱりこいつには敵わない」と感じた。
にやける顔を見られないようになまえの腕を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。



君と迎える真夜中0時



(ところでなまえさん)
(ん?)
(その格好は誘ってるって受け取っていい訳?)
(はっ!?)
(誘われちゃあ乗るしかないよな)
(違う!違うから!)
(んじゃ遠慮なくいただきますかね。俺、今日誕生日だし)
(いや、ちょっ、待て!話を…!!)




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ホークアイ生誕企画様に提出!
ギリギリになってしまって申し訳ありません…。しかも自信がないです…。
素敵な企画に参加させていただいてありがとうございました!






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