二人の恋路にアドバイスを求められた僕なので、
……うん。僕が答えられる範囲の見解でよかったら力になるよ。
質問内容は「どこから恋かと気付いたか」、「どっちがどれだけ想っているか」。で間違いないかな?
作用・反作用。
そのふたつの言葉を知っていれば、簡単に説明出来ることなんだけど。
じゃあ、わかりやすく物体Aを姫発、物体Bを黄天化と仮定しての説明にしようか。
物体Aと物体Bが相互に力を及ぼし合う場合に、相互に及ぼし合う力の一方を作用、もう一方を反作用と呼ぶ。
語感から勘違いしやすいけど、作用と反作用における主従関係は全く無くって、どちらも個としての絶対的な力だから、そこは間違わないようにね。
一直線上で同時に働き出す物体Aと物体B。力の向かう方向は真逆の場所だけど、ふたつの持っているそれぞれの力は対等で、絶対値は等しい物。だからどちらか一方だけが力に押されてしまうこともない。
全くの別物なのに。一見そうは見えないけど、ニュートンの原理は全部ここに詰まってる。
「物が地球に落ちる」場合、地球が物を引く作用、物が地球を引く反作用、どっちも同じ力だから地上でそれがぶつかるんだって知ってた?
それがなんで、「物だけが落ちる」ように見えるか。それは地球の表面質量があまりに大きいから、観測上地球が動いているように見え難い。ああ…うん。それ以上の説明してると多分こんがらがっちゃうと思うから、今日はここまでにしておくけど。……もう授業で習ったはずなんだけど。
つまり。
どれだけ片方だけが惹かれている、惹き付けているように見えても、二人とも同じだけの力で引っ張り合ったり押し合ったりしているってこと。
だって「ひと」と「ひと」の存在意義に優劣なんてつけられないから。その時点で等しい君たちの、「両想い」ってそう言うこと。
人生や学校を真っ直ぐな直線と仮定してみて。
個々の価値観も家庭の内的状態も、重なるところと真逆なところ。相反するそれを持った二人が、ある日出会っ…たんだよね?
ん?え?屋上?立ち入り禁止じゃなかったっけ?
ああ、じゃあ…先に話そうか。
それは対照的に反対を向いてた姫発と黄天化。
お互い相反する人だから、そこに反発と言う名の力が生まれた。その結果、今、惹き合ってるでしょ?
それはどっちがどれだけ相手を想ってる、惹き付けてる、って、説明出来る?違うよね。だって出来ないからこうやって相談に来たんじゃない。
結局、同じだけの力で想い合ってるから惹き合ってる。
そうやって惹き合ってるから、背中を向け合っていても背後にちゃんと存在を感じるでしょ?抱き合ったらあたたかいでしょ?
そしてきっと、そんなところに惹かれ合ってるんだと思うな、僕は。
ふたつの力を乱すとしたら、そこに電力や磁力を加えた場合に、新たな作用が起こること。
ほら、よく言うじゃない?第三の人物を交えたときに「恋の火花を散らす」なんて。
さて、ここまでの結論。
物体B「俺っちの好きって、多分まだそんなでかくないさ」
物体A「大きさ比べじゃねーだろが」
この考えは、物体A・姫発の正解。
因みに物体B・黄天化が突然恋心に気が付いて揺れてしまう時間があったようだけど、それは「第三者を交えた勘違い」っていう電力が生まれたから、急激に惹く心の均衡が崩れたからだろうね。
本当は一目惚れ、だったんじゃない?話を聞くとそう感じるな。
だけど、お互い対等であるところにも強く惹かれた君たちだから。
依存関係なく、楽しい毎日を送ってね。相互理解の瞬間があるから、恋愛って楽しいんだと思うよ。
「妥協」を覚える日より、今は反発する新しい発見があって楽しい時期じゃない?高校生の特権だよ。
以上、校内カウンセラーとしての意見とアドバイス。
僕の個人的な見解。
「どっちの好きが大きいか小さいか」ってケンカばっかりの様子は、みんなうんざりしてる頃だと思うからそろそろ落ち着こうよ。
どっちの背が高い、頭がいい、剣道が強い、え?セックスが上手いか?
……保健室のベッドはそんな為に貸しません。
end.
2011/01/10
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