其ノ参おかしいさ、おかしい。頭がちっとも働かなくって、闇夜の屋根の上、剣の先がぶれて消える。
振りかざした光の先には答えなんてーのは用意して貰える程、簡単じゃないみてぇさ。
犯人は、弱い俺っちの、拳の中。
触れた指の感覚はまだあっちぃぐらいに残ってて、頭から被った井戸水の冷たさに、誰かと抜け出して飲んだ杏の冷酒が甦る。
胸が熱くて、見上げたあーたの目が熱くて、ぬるくて弱い感情が、俺っちの中に籠城決め込んじまったさ……。
あーあ、ついてねぇ。
ずっと殺してた、訳のわかんねぇモヤモヤが、煙草と一緒に消えりゃーいいのにさ。見てるだけで弱くなる。ブーツを睨んだら、目から雨が降り出した。
消えちゃくれない身体の火が恨めしくて、光を消した莫邪を睨む。
だって、そんなの、おかしいさ。
遊び人のマントの手入れした指がまだあっちくて、目も熱いなんて、認めたら訳がわかんねぇ。わかんねぇさ俺っちなんか、──なぁ、王サマ。無力な俺っちは、無力な、自分は消えてしまえ。
明日は護衛に戻れたらなって、莫邪を磨くことにするさ。