愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない




いつも傷だらけの膝は、やっぱ優しく撫でることしか出来ないハンパな俺だけど。舌を差し入れた頃には、
「っ…ぁうッ……」
未知のそれに震える天化が、首を伸ばして俺を見ていた。震えながら。
「王サマっ、のっ、カオ……見ながらしたかったさ」
「っとに…バカか……」
「だって見んなって言うか、らっ」
震える天化はぐったり脚を投げ出して、俺の舌を追うのを決めたらしい。いだだだ…ガキの頃にひいた風邪みたいだ。むせて荒れた胸を痛ませながら、天化の脚は離さない。……ああ、天化が傷なんてなんでもねぇって言うの、アレにちょっとは近い気分なのか。そうしたらなかなかこの気持ちも居心地イイっつうか…。自虐的!とか献身的!とか、
「んっ…お、お、サマ…」
そんな恋愛小説みたいなことでもなけりゃ、武勇の類いでもないらしい。まぁ溢れ返るラヴにお釣くるぐらいな感覚?左右に引っ張った内腿の皮膚が艶めいて、
「この辺は」
「……ッ、ふぁ」
傷がないんだな、なんてな。あったら違う意味でも俺は都合悪い訳だけど。きつく口づけたら汗ばんだ脚をジタバタさせて、柔らかい唇を噛む気配がした。
……声出せよ。
「……王サマっ……!」
「ん゙んっ!?」
とか言いかけて気付いたが、こりゃ"言えない"も"聴こえない"も両方が正解だ。そこだけ白い内股にすっかり耳も首も塞がれちまって、今度こそ窒息の文字が過る。
「ちょっ!!」
――……ちっそく!ちっそく!
「っと!おい!力抜けって!!」
ジタバタジタバタ続ける脚が漸く我に返る頃には、俺よりむしろ辛そうに眉を歪めた男がひとり、右腕で顔を覆って寝台の上にズルズルずれた。い、今更顔隠されてもさぁ……。
「……ごめん、……すまねぇさ王サマ」
「いやいいけど、だから。声出せよ。ヘンに我慢してるから力入るんだろ」
脚の間から這い出して、今度こそ自覚して口ごもる耳にキスをひとつ、
「天化の声聴きてぇよ」
甘く甘く響かせた野郎の頼みごとは、
「……だから、そーゆーの」
「ああ、生ぬるいの嫌いなんだっけ?」
また重ねた唇に埋もれた。なら夢にまで見たコイツ認可済の実力行使が出来る筈だよな?
「声出せってば」
「……うぁッ…!?」
「天化!」
天化に埋もれた指の数は数え忘れた。その点だけいまだ順応しきれないらしい唇を噛む歯がほどけて弾けたのは、
「や、ひ、ぁあ――!!」
俺の侵入に天化の全身がまっすぐ伸びるのと同時だった。
「…うわバカッ急に締めんな!!」
まさに参入途中、いろいろ間に立ってる俺としてはあまりにも唐突で、構い続けた耳朶からも飛び退いて自分の場所を確保にかかる。案の定両足まっすぐ、ものすげー力で俺を締め出そうとする両膝を支えて受け止めながら、仰け反って落ち着きなく震える喉仏を見てた。……確かにそれもぜったいプリンちゃんにはついていっこない。
「っ…、ん…あ」
想定外の快感に呆然と宙を見る天化の髪は、男にしたって硬い部類だ。それがあまりに可愛い浅い息に濡れながら、寝台に手足をぐったり投げ出している。
「……かわいーの。天化の"ひゃーぁ"ってすげぇ好き」
「…ん、んなの、いま」
「今だけじゃないぜ?前も言ってた。夢中で気付かねぇだけだろ?」
「う」
ああヤバい。とうとう真っ赤になって結んだ口に、散らばった白。その絶景前に我慢する言われもない訳で、
「ひゃッ、急に、王サっ……」
力の抜けきった脚を両肩に担いで、強く惹き付けて腰を抱いた。右と左で持ち上がる脚の角度が違うらしくて、――いわゆる利き脚ってヤツね――思う程奥まではまだ赦されない。
「ほら、また"ひゃあ"じゃん」
「っるさいさ、ぅぁあ゙っ、や」
「ふはっ、今のすげぇ男声…」
…………ん?あれ、跳ねる天化を抱えて言いながら頭を突き抜けた予感。
「……わり、ごめん、天化」
的中とばかり、視線を外したヤツが唇を噛み締めてる。ああもう、俺ってホント馬鹿だ!
そんなことを気にしないヤツなんだろうと、なんとなく割り切ったものを感じていたはずだったのに。それは毛頭間違いらしい。目を閉じて続けない天化の髪を撫でかけて、
「うぁっ!?王サ、」
思い切り深く突き上げた。
「ん、っとに!っ、信じらんねーさ!!」
「生ぬるいのっ、嫌いなんだろ!」
「っく…」
深く強く。汗の粒を振りまきながら困り顔ですがり付いてくる喉仏に、軽く舐めるみたいにキスをして胸が熱く締め上げられる。
「こっちだって喉仏ついてんだからさ、"あー!"でも"うおおぉー!"でもいいから!!」
天化の喉が少しだけひきつって、俺の喉もつられて締まる。ああ、こんなときばっかりコレだ俺は!
「天化の声ならいいんだって、ごめん、だから全部、……声出せ天化!」
「……うおお、は、多分っ、言わねぇさ」
きひ、なんてイタズラっぽく笑う唇を舐めたら、ひきつる喉が解放されて、まさかと思う間もなく肩の上で強張った両足の力が甘くふやけてずり落ちた。歓迎するみたいに絡み付く中の感触も。むしろうおお!は俺の方の心情がバッチリで、唇で遊びながら天化の細い腰を抱く。やべ、あーやばい、堪んねぇ、今日何回ヤバイっつったよ俺?
「あっ…あ、王サマっ…!」
断続的に上がり出す天化の甘い声を両耳に、たまに踵落としよろしくひでぇ一撃入れてくれる傷だらけの脚を両肩に。溢れかえる幸せと快感に浸った。
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